「数百年前までは違ったのよ、私達は人間だけの世界を生きることができないまま死んでいくっていうの?」
「私は獣人が嫌いなの。だから反逆する。いつか彼らを根絶やしにして、また人間の時代を作るのよ」

 そう言い放つ彼女は御島先生だ。美人なニンゲンの先生であるが、私は彼女が嫌いだ。だって彼女は獣人が嫌いだから。
 何が平和だ、何が人間の時代だ、と思った。獣人が消えた世界を羨望の眼差しで眺めるその瞳は、濁った目をしていて気味が悪かった。お祭りで飼ってきた金魚のような、いつ死ぬかわからない、そんな弱々しく不安定な目をしていた。
 集められた生徒たちもまた、そんな目をしていた。当然この秘密の集会に獣人たちは招待されていない。生徒たちの噂を嗅ぎつけて私もやってきたわけで、本当に興味本位で来たわけであるが、大多数の生徒たちがこの先生の肩を持っている、つまり獣人に反逆心を抱いている者たちだ。
 彼らは獣人に罪を擦り付けているだけだと思う。強者を妬んでいるだけなのだ。所詮人間だけの世界になったとしても、私は何一つ変わらないと思う。殺す奴は殺す。怯える奴は怯える。自殺する奴は自殺する。それだけだと思う。
 ただ、人間だけの世界は酷くつまらなく、よわっちいに決まっている。それだけは確信が持てる。それに……きっとシャチくんみたいに、私を見つけてくれる人がいない。それだけで十分、つまらない退屈な世界なのだ。
 つまらない、どうしようもない世界なのだ。
 知らないくせに、人間だけの世界なんて知らないくせに。
 何故幸せになるだなんて断言できるの?
 ……馬鹿馬鹿しい。



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