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※丸井の捏造元カノがいます。

幸村は、これは面倒なことになったな、と表情を変えずに内心頭を抱えた。ここ数日廊下ですれ違う度に声をかけてくる女子生徒にどこか見覚えがありつつも、特に興味が無いので気にせずにいたのだがその彼女のニックネームを聞いた瞬間にカチリとピースがはまった。彼女の友人が発した「りさぽよ〜〜」そうだりさぽよだ、この子はりさぽよ、丸井の元カノであるりさぽよ、どうりで見覚えがあるはずだ、と幸村は一人納得し顎に手を当てた。そして冒頭に戻る。どう見ても自分はこのりさぽよにロックオンされていると幸村は自覚しているが、それが丸井の元カノであるという時点で面倒さが倍増した瞬間である。じゃあまたね、と語尾にハートでもつきそうな声色で言い残し廊下を可愛らしく小走りで駆けてくりさぽん間違えたりさぽよに、幸村は、あぁ、と力なく答えて手を振った。

「丸井ちょっと」

その日の午後、部活前に丸井を手招きした幸村。

「お前の元カノに言い寄られそうな状況」
「元カノ?だれ?ななちゃす?」
「ちがう」
「かなめろ?」
「ちがう」
「ちぃぽぽ?」
「ちがうけどさっきから名前ヤバいな、そういうのもっとちょうだい」
「りさぽよ?」
「そうそうりさぽん〜!」
「いやりさぽよな」
「ぽよ…」

部室裏に幸村の気の抜けた声が響いた。

「そういや幸村くんの連絡先教えてって昨日りさぽよから来てたわ」
「教えちゃったの?」
「まだ」
「頼むから教えないで」
「なんで、りさぽよいい子だよ」
「ぽよがいい子だとしても」
「略すなよゆきぽよ」
「ゆきぽよ言うな」
「まあとりあえず教えないでおくけども」
「丸井の元カノってみんなあんな感じ?」
「そうゆめかわな感じ。かわいいっしょ普通に」
「ゆめかわ…」
「まあ幸村くんのタイプではないか」


そして1ヶ月後、ちぃぽぽなるニックネームの持ち主に言い寄られた幸村は、また冒頭に戻ることになる。

「丸井、元カノにちぃぽんっていなかった?」
「ちぃぽぽな」
「ぽぽ…」

あれ、前にもこんなやり取りした気がする。

190430
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