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テニスコートに夕陽が射し込む頃、遠くの空で花火が鳴った。明るいうちに打ち上げるそれは、祭り開始を告げる空砲だ。

「ウッ!グヘァッ…カハァッ…」

やると思った。音に合わせて体を大きく震わせ、唸りながらコートに倒れ込む丸井を軽蔑の眼差しで見下ろす。銃で撃たれました、そういうネタである。つい数日前は自分も乗っていたそのネタだが、今日は遠慮したい。真田がこっちを見ているからだ。知りません、俺こいつのこと知りませんから。じりじりと丸井との距離を空ける。すると倒れ込んでいた丸井が地を這って俺の足にしがみ付いてきた。

「えっちょっ勘弁して」
「つ、次の…第2射撃が…く、る……」
「えっフリ?やれって?今の状況わかっとる?」

すると丸井の予言通り、再び響き渡る空砲の音。

「グッ、ングゥッ!…ゲハァッ…」

今の声は俺ではない。さすがにそこまで肝は据わっていない。このテニス部の中で最も肝が据わっていて、そして怖いもの知らず、そう幸村である。幸村が渾身の演技で倒れた。まさか幸村が乗ってくれるとは思わず、2人で腹を抱えて笑った。

「幸村ァー!!」

しかし、本気で心配して駆け寄る男が一人。そりゃそうだ、ついこの前まで入院していた幸村が倒れたのだ。そんな真田の気配を察知した幸村はすぐに「うわやべっ」と起き上がり逃げる。追いかける真田。2人はコートを飛び出しどこかへ消えた。

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