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「なあなあ白石ぃ、闇鍋やろうやー」
「ちょっとこの子に闇鍋なんて教えたの誰!」
「部長標準語きんも」
「お前か財前」
「ちゃいます」
「あははは、俺ばい」

こんなやり取りがあり、新年会と称して俺の家で闇鍋パーティーが開かれることが決定した。闇鍋とは各自で具材を持ち寄り、暗くした部屋の中それを鍋に入れて食べるという方式の鍋である。ええか、ウケ狙いのヤバいのん持ってきたやつはシバくからな!と言っておいたが奴らがはいわかりましたと素直に従うとは到底考えられない。
来たる当日、俺の部屋に男5人。

「2010年よお疲れ様…そしてこんにちは2011年…振り返るとよみがえ」
「そういうのいらんから。見て財前の冷たい目ぇ」
「俺に話し振らんといてください」
「闇鍋めっちゃわくわくすんなあ!」
「はいはいはいほな電気消すで」

パチリと電気が消え、真っ暗闇となった部屋ではどこに誰がいるのかさえわからない。その中で白石のほなみんな具いれやーという声を合図に各々持ち寄った具材をグツグツと煮立ったキムチベースの鍋に入れる。ぼちゃぼちゃという音が聞こえ、一体皆なにを入れたのだろうかと興味半分恐怖半分。ここは千歳を除いて生粋の大阪人の集まりだ、無難な具材を入れる奴がいるはずもない。もちろん俺もその中の一人である。

「ルール説明すんで。部屋暗くしたままこのお玉で鍋をひとすくいして自分の皿によそってください。ジャンケンして勝った人から時計回りな」

鍋にひとまず蓋をして電気を付ける。ジャンケンの結果金ちゃんが先頭となり、鍋にお玉を入れた。おおー具沢山やーと言いながら鍋をぐるぐると掻き混ぜる音がする。その次に俺、財前と時計回りに全員が鍋から具をよそう。既に部屋にはただならぬ臭いが充満していた。

「それでは皆さんご一緒に」

いただきます!暗闇の中手探りで箸を探して右手に箸、左手に皿の状態でまずは臭いを嗅いでみる。これは…理科の授業で一度は耳にしたことがある刺激臭…!直接鼻で嗅げば鼻をやられるというその強烈な臭いは手の平で扇いで鼻にそれとなく嗅がせないと危険だとよくテストに出るあの…。皆することは一緒のようであちこちから苦悶の声が聞こえた。そして俺が意を決して箸を皿に伸ばしたとき、あぐらをかいている俺の足に何か温かいものがぼたぼたと音をたてて落ちた。

「え!なになになになに」

何事かと思い急いで携帯の液晶の明かりを頼りに横を照らしてみると、財前がマジ顔で口の中のものをリバースしていた。わざわざ俺の足に。

「おまえええ!」
「だ…誰や…干し柿入れたん誰や…」
「って財前言ってますけど!」
「ああ、俺やで白石やで」
「どや顔しね…」
「って財前言ってますけど!」
「どや顔しとるってようわかったな」
「しとるんかい」
「おっかしなあ。干し柿美味いやんな?」
「うわああああああ」
「金ちゃん!どげんしたと!」
「まずうううううううううええ」
「干し柿か?干し柿にやられたんか?」
「いいいいちごおおおおおえ」
「あ、苺入れたんのも俺や」
「果物は…あかんやろ」

それ以降金ちゃんは闇鍋という言葉を耳にする度謝罪の言葉を連呼するようになり、財前は白石への復習を企んでいるのか[闇鍋 ヤバい 具]でのGoogle検索を怠らなかった。

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