ああああああああああああああああ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ朝食ったものが全て出てしまいそうだげろろろろろろ。こんな陸上部まがいなランニング、一体誰がやろうと言い出したのか。それはもちろん幸村君である。幸村君がやると言ったらやるしかないのだ。もうかれこれ40分は走ったのだがこのランニングは一時間走という名目上、あと20分は走らなくてはいけない。体力バカのジャッカルはまだ余裕そうだけれど俺にはもう限界がきていた。言い訳をするわけではないがつい昨日が全国大会決勝だったのだ。試合ももちろん、電車での移動など地味に疲れることが重なり疲れが溜まっている今日、なにゆえこんな疲れることをするんだと思ったが、ああ俺達は負けたのだから悠々と休んでいる暇はないのだと、背筋をしゃんと伸ばす幸村君を見て思った。一番悔しく屈辱的な思いをしたであろう幸村君が俺達の中で一番さっぱりした顔をしていた。なんで負けたんだろう何がいけなかったのだろうと悶々と考えている俺とは真逆で、どこまでこの人は良く出来た人間なのだろうと思った。やっぱり俺の見習うべき人はいつまでも幸村君なのだ。
そう自己完結させたところで時計を見てみるとあれから3分しか経っていなかった。
「に、仁王せんぱーい!」
一人目の脱落者が出た。後ろを振り返ると地面に張り付いている仁王が目に入り、笑いが止まらなくなって益々呼吸が苦しくなった。立たんか仁王!と怒鳴る真田の声に嫌々起き上がり、とろとろ歩き出した仁王を見ると本当にキツそうな顔をしている。それにも構わず真田は怒鳴るもんだから面白いを通り越して少し哀れにも思える。
「仁王走れよ!なんで歩いてんだよ!」
え誰今の声誰、まさかのまさかの幸村君とか言わないよなとか思ったらまさかのまさかだった。怒るというよりは泣きそうな声と表情で言うもんだから、ああこの人は昨日負けたことが本当は誰よりも悔しかったのだと感じた。悔しいなら悔しいって言えばいいのに。
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