僕だけの君だから



※ただのヤンデレ






ああ、僕のかわいい文人。
こんなにも汚れてしまうなんてね、でも、安心して。それだけで僕は文人を嫌ったりなんてしないから。
だって僕だけの文人なんだ。誰かに触られたりしたら、それこそ更に汚れてしまう。
どうしようもないくらいにかわいくて愛しい愛しい文人。僕以外を見るなんて許さない。



「ただいま、文人」
「兄さんっ!」

キイ、と音が鳴る錆びた扉の向こう側に愛しの文人はいる。扉はこれでも、中へ入るとなかなかに生活感は感じられるこの部屋。ここに、文人を閉じ込めていた。
決して監禁などではない。だって、これは任意の上なんだから。

「お帰り、兄さん。ねえ、今日も…忙しい?」
「んー…そうだね、たまには遊ぼうか」
「本当!? ありがとう兄さん!」


無邪気でかわいい弟だ。僕と同じ双子とは思えないほどに。
遊び、といっても子どもがするような遊びではない。強いて言うならば、性的な遊びだ。

少し昔に今と同じように「遊び」と称して文人を犯した。少々媚薬を使用したからなのか、文人はとても気持ちよかったらしく、今もそのときの快感が忘れられないらしかった。


「兄さん兄さん」
「何だい? 文人」

「……ありがとう」


小さくポツリと呟き、恥ずかし気にうつむく。すごくかわいい。

「いつもだけどかわいいね、僕の文人。愛してるよ…」
「に、にい、さ……ん…」


少しだけ開いていた口から舌をねじ込み、割って入る。歯列を舌でなぞるとぞくぞくしたように肩が上がった様子が伺えた。膝が今にも折れてしまいそうだったから、後頭部を手でしっかり支える。

キスをするとき、文人はいつも懸命になって目を瞑る。すごく健気なような気がして堪まらないのだ。

時折、甘い声が聞こえて耳が心地よい。ぴちゃぴちゃと静かに響く音に僅かな興奮を覚える。息が苦しくなり、僕の背中が軽く叩かれるのを合図に唇を離す。
とても名残惜しいものの、離れた口から銀の糸がひいて見えた。文人の口端からはどちらのか分からない唾液がこぼれる。

「……本当にキスが好きだね、文人は。もう変な気分になった?」

「……っ…」


ふらついていた足は耐えられなくなったように地面へ落ちる。顔を真っ赤にしてうつむいているのもいいけど、僕としてはちゃんと僕を見てほしい。

「兄さん……」
「何?」

「早く、……シて…?」


ああ、かわいいなあ。どれだけ言っても足りないくらいに!

それはもう、言葉なんかじゃ表せない。どれだけ愛を囁いても呟いても、束縛しても! 好きなんてものじゃないんだ、きっと。
本当に愛してるんだ。


僕だけの文人――他人に汚されるのだけは許さないが、僕が汚すのならそれはそれでありだと思う。


手始めに、文人を調教してみるか。






fin.




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