君が悪いよ




付き合い始めて数週間。
恋人らしいことをしたといえば数日前。ずっと恥ずかしがって何かと理由をつけて断る藤巻くんを制御して、無理矢理したキス。そのまま舌も入れると逃げられた。

それでもめげずに追いかけて捕まえたのを覚えている。


それからもっと進展した気がするのは三日前。性行為のとき、どっちが上か下か。そんな話題を降ったのはもちろん僕であり、藤巻くんはしどろもどろに何かを言いかけていた。それを無視して『僕が上だよね?』と笑顔を忘れずに言った。
迷ったように目を逸らすから、キスをした。今度は押し倒してから。今回こそコトに及ぼうと計画していたのだが、押し退けられて逃げられた。

やっぱりめげずに追いかけて捕まえた。


そして今日。なんとか誘いこんでヤってやろうと決心した。

その結果が藤巻くんと一緒にお風呂に入ることになった。当初は部屋でを予定していたものの、初めてがお風呂、しかも公共の場となるのはなかなかスリルがあるし思い出にも残る。
すでに消灯時間を過ぎていたし、どうせ二人きりだという理由でお互いの身体を洗うことになった。もちろん提案したのは僕だ。


藤巻くんの身体を洗ってあげていると、恥ずかしいのか顔を赤らめながらそっぽを向いている。

「ッん…」

と、突然艶を帯びた声をあげた。
どうやら胸の飾りを掠めたタオルがお気に召したらしい。

「どうしたの? 藤巻くん」
「な、なんでもねーよ!」

強がっちゃって…可愛いな。

僕はタオルを置くと、素手でボディーソープを藤巻くんの身体に塗りたくる。
あからさまに胸の飾りを重点的に責めてやると、藤巻くんは身体をビクビク跳ねさせて声をあげた。

「っ、あ! …んぁっ…大山、やめっ…!」

完全に突出した胸の突起を弄りながら、疼いて仕方ないだろう下半身のモノを刺激してやる。

「っ……ちょ、ちょっと…! マジでやめろ!」

その声を聞いて一旦手を止めた。
僕は少しショボンとしたような口調で言った。

「…僕とするのは、嫌…?」

藤巻くんは少し焦ったような申し訳なさそうな、そんな表情をした。

「ち、違くて…その……」
「じゃあ何?」

「……あれだよ、ほら………俺が下なのか?」

思わず耳を疑ってしまった。え? 何を言ってるの。

「…今更じゃない?」
「え」
「だって藤巻くん、キスくらいで顔真っ赤にしてるし」

今まで思ってたことを口に出して言ってやると、また真っ赤にした。これからヤるっていうのに、逆上せないかな。
そんなことを考えながら、さっきの続きを始める。
少し固くなっていたのに萎れたようになっていたから、より多くの刺激を与える。

「や…めっ……っ…触ん、な…」

言動とは裏腹に藤巻くんの自身からは先走りが溢れる。
それを心底愛おしいと思いながら、突起を刺激していた手を、藤巻くんの未開発であろう蕾に宛がう。

「ぅわっ! …お、大山……?」
「…藤巻くん、もしかして知らないの? 男同士はどうするか」
「し、知らねーよ…そんなもん」

「ココにね、僕のを挿れるんだよ?」

藤巻くんの先走りを借りて指をたっぷり濡らしてから蕾に押し込んだ。

「ッ痛…! お、おやまっ…痛いから……抜けよぉっ…!」
「どうして? 藤巻くんは僕が好きなんじゃないの?」
「ふぁ…ん、そ…だけどっ、それと…これとは別…だろ」

「? …愛故の行為なのに?」

藤巻くんはキョトンとしている。

「まさかとは思うけど…知らなかったの?」

藤巻くんは少し恥ずかしそうに、小さく頷く。
驚きを隠せないまま何とか性行為の説明をすると、藤巻くんは僕と付き合っている割りに男性同士の性行為という発想が無かったらしい。

説明が終わると藤巻くんは真っ赤になったかわりに抵抗を止めた。

僕は藤巻くんの秘部から指を抜き、かわりに舌を挿し込んだ。


「ひゃ、あぁっ!? やっ、ん…大山っ、何し、て…! んな…きたな、い…」

ビクビクと震えながら眉尻を下げ、イヤイヤと首を振る藤巻くんの可愛さは半端なものじゃなかった。

「汚くなんかないよ? 綺麗だから…」
「だ、めっ…ん、…ひぅ…や…あ、んッ!」

耐え切れなかったのか藤巻くんは浴槽に向けて精を放った。

「…早漏だね…もうイッたんだ」
「ふ、ぁ…わり…大山…」

いいよ、と頭を撫でたのとは裏腹に僕は我慢できずに僕自身を藤巻くんの蕾に宛がった。ぬるぬると動かしてやると蕾がヒクついているのを感じた。

「やめっ…!うぁ…痛ッ、お…おやまぁっ…!」

「うわ、ちょっとキツい…。藤巻くん、ゆっくりでいいから呼吸をして、力抜いて?」

あまりの締め付けに目が霞んだ。
軽く罪悪感を感じながらも藤巻くんの中の熱さに驚きを隠せない。

「むりだって…、……大山ぁ…」
「大丈夫、息吐いて、肩の力も抜いて…そう。ほら、全部入ったよ?」

お互い大量の汗をかきながら、必死だった。
四つん這いでもがく藤巻くんの瞳から零れた涙がタイルに水溜まりを作った。

「…動いても大丈夫?」

はぁはぁと息づく早明浦の息が整うのを待って、僕は聞いた。

「っん、…だいじょ…ぶ…」

一見大丈夫じゃなさそうだったけど、僕にそれを気遣う余裕は無かった。
僕がゆっくりと抜き差しを繰り返すのを、藤巻くんは必死に堪えていた。

「んゃ、…う…あぁっ…んぅ…!」

暫くすると藤巻くんの声に艶が混じってきた。
どうやらある場所を掠めているようだ。

「あ、ああぁっ! やめっ…ぁあっ…んッ…」
「見つけたよ、藤巻くんのイイところ」

僕は藤巻くんが甘い声を出してしまうその場所を重点的に攻めた。

「やだぁ…っおお、やま…あ、もうっ……」

限界を訴え懇願の眼差しを向ける藤巻くんを諭すように、僕は微笑んだ。

「トコロテンでイッちゃうの? ヤらしいね、藤巻くんは」
「ふぁ…? トコロ、テン?」
「まあ、そりゃ…知らないか。これをね、触らないでイッちゃうことだよ」

これ、とふるふると震える藤巻くんの自身を指差すと、藤巻くんの顔が目に見えて真っ赤に染まった。


「一緒にイこうか?」

コクンと頷いた藤巻くんの頭を撫でてやると、僕は腰の動きを速めた。


風呂場に卑猥な音が反響する。

「あ、ぁあッ…は、激しっ、い…んっ」

そう言いながらも、僕に合わせて腰を振る藤巻くんが愛しくて仕方なかった。
他人の肌に触れるのが、こんなにも気持ちいいことだなんて。きっと、相手が藤巻くんだからなんだろうけど。

「やあッ、……大山っ、イッ、イく…!」

「っ、僕も…出すよ? 藤巻くんの…中、に…!」

「やぁッ…あつ、…熱いの…奥に、俺っあ、あん、ああッ! イくぅっ…!」


ほぼ同時に僕らは射精した。

小刻みに痙攣して射精後の余韻に浸っている藤巻くんを抱きしめてやると、ふととろけた瞳が近付いてきて触れるだけのキスをされた。
何だかもどかしくて僕は藤巻くんの顎を掴み、舌を入れて深い深い恋人同士のキスをした。


これでもう、僕だけのものだとばかりに。




fin.



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