男の、それも既に100回俺のことを殺している相手を好きになるだなんて、我ながら頭おかしいんじゃないだろうか。
 俺はMかよと自分にツッコんでみる。まぁ、意味などないが。


 ちらりと自分の前に座る男を見る。現在2人きりのこの校長室で、静かに己の愛武器の手入れに勤しんでいる男・野田。


 初対面でいきなり100回殺してくれた男。そして俺の頭の中の半分以上、いやほとんどを支配している男。


 俺の頭の中の野田はいつだって可愛い。普段ツンツンしているけど、ふとした時にデレる。すばらしい黄金比のツンデレだ。
 まぁ現実は甘くはないんだけど。


 ふいにハルバートの手入れをしていた腕を止め、野田がこちらを見た。


「…なんだ」

「なにが?」

「だから、さっきからこっちを見ているだろう」

「え、ああ、悪い」

「ふん」


 どうやらかなり長い間野田のことを凝視していたらしい。アホの野田が気になるくらいだ。相当のことだろう。


 でも、野田はそれだけ長い間見ていても飽きないくらいの容姿をしている。


 確かに口を開けばゆりっぺゆりっぺで直情的でゆりにしか従わないアホだが、紫の髪、健康そうな褐色な肌。なにより意志の強そうな、押し倒したくなる紫の瞳が一番好きだ。全部好きだけどな。


 と、良からぬ方向へ傾きかけた頭を戻して再度野田を見る。


「……だから、用がないならいちいち見るな」


 明らかに不機嫌そうな野田の声に今さらビビらない。いつものことだ。


「用はないけど、可愛いなって思って」

「かわ……っ!?」


 ガシャンと野田の手にあったハルバートが床に落ちた。


「おい、落としたぞ」

「ちっ、近づくな貴様…!」


 近づくなって、酷い謂われようだな。


 ソファーの裏に隠れてしまった野田にため息をつきながら、ハルバートを渡すために息を殺して近づく。こうしないと多分野田はすぐに俺の存在を察知して逃げるだろう。


「おと、おと、音無が、かわかわ、可愛、いって…音無が……っ」


 小声でぼそぼそ呟いているのをよく聞いてみればそんなことを言っていて、耳まで真っ赤。
 これはもしやデレ期?いやそうじゃなくて、野田ってもしかして俺のこと、好き……なのか?


「野田」

「っ…」

「逃げるなよ」


 ソファーを迂回して逃げ腰な野田の手首を掴む。しゃがんで、座り込んでいる野田の目線に合わせてキスをする。


「?」

「野田、好きだ」


 いまいち理解できてなさそうな野田に好きだと告げる。すると自分が何をされたのか言われたのか理解できたのか、ボッと音がしそうなほどの勢いで真っ赤になった。


だから俺は君が好き
(「大丈夫か?野田」「きっ、貴様何を…!」「キス。と告白。野田、返事は?」「うっ……お」「お?」「俺も、好きだバカ」「野田ーーーっ」「なっ、抱きつくなバカ音無!」)




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