無気力気力

※11話の「奏ちゃん」呼び、12話の「女の子同士」発言にインスパイアされた結果の捏造




彼女は泣いていた。強くて、誰からも慕われていた彼女が。

「ごめんね、奏ちゃん…ごめんなさいっ…!」
「あなたが気にすることじゃないわ。謝らないで」

彼女が泣く理由はあたしにあった。

彼女がリーダーとして率いる「死んだ世界戦線」、略して「SSS」。その戦線部隊は、これまでに長らくのときを経てあたしと戦ってきた。彼女らはあたしを攻撃した。だからあたしも己の身を守るため、反撃した。いつしかそれは当然となり、戦いの日々は続く。
でも、最近来た「音無絃結」がこの世界を新たな方向へと導き出した。
彼は、絃結は、あたしがみんなを攻撃したくてしているのではなく、みんなを改めさせようとしているのではなく、みんなをこの世界から成仏させたいだけだと願っていることに気付いてくれた。それと同じときぐらいに、彼女も気付いたらしい。

「ご、…めんなさっ……たし、あたしっ…! …ちゃんと、もっと、…仲良くできたかも…しれないのに……!」
「もう過ぎたことだわ。大丈夫、大丈夫」

そう言って彼女の背中に手を回す。こんな、弱りきった、普通の女の子のような彼女は初めて見た。ましてや、泣き顔など。

「…好き、好き。大丈夫。あたしはあなたが好き。もう大丈夫、安心して」
「……あ、ぅ…奏ちゃんっ…」

安心したように安堵の息を漏らす。あたしは、こんな彼女をたしなめること、慰めの言葉しかかけられない。どうして、あたしはこんなに無力?

それなら、あたしも、無気力な気力がほしいとそう思った。





fin.



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