恋文




手紙を書いた。
女々しいとは思ったが、いつも恥ずかしくて素直になれない俺にとっては紙に思いを綴るのが精いっぱいだった。

一晩かけて書いた翌日、校長室。
当然戦線メンバーはいる。…こんなとこで渡せるはずがない。
握っていたハルバードをまた強く握り締め、校長室を出ようとする。

「おい、野田どこ行くんだ?」
「……貴様ごときに教える義務はない」

ちなみに話しかけたのは藤巻だ。奴は何かと俺に気を使ってくる。ゆりっぺ曰く大山といい感じらしいから深く関わらないようにしているのだ。

「…ふーん…」

何故かニヤニヤしながら言ったから、苛立った。すぐ隣にいた大山なんかは黒い笑みを浮かべていて奇妙だ。
一刻も早く去ろう。


やはり、必要なのはシチュエーションだ。
放課後の教室で…というのはなかなかいいが、生憎そのようなベタな青春をするつもりはない。
それなら…机の中。いや、あんまり教室に行かないからダメだ。
となると…下駄箱? 下駄箱なら校舎内を出入りするために使用する。よし、さっそく下駄箱に向かおう。


……しかし、NPCの目が痛い。
移動中はどうしてもNPCと遭遇してしまう。
ハルバードを持って周りを睨む俺に手紙は不釣り合いなんだろう。だが無視した。

(お、お…おと……あった)

案外早く見つかり、手紙を入れようとする――前に、周りを確認。
…よし、誰もいないな。


これで、伝わればいいんだが…。













「なんか手紙入ってた」
「くっそラブレターか!? いいよなあモテる奴はこんにゃろー!」
「ええと…なんだこれ。名前無しな上に…明らかに男の字だ」
「え!?」
「読むぞ。『好きだ、滝と付き会ってくれ』」
「こりゃまた誤字が目立つ…(つーか野田の字っつーことがバレバレなんだが…)」
「新手の嫌がらせか?」
「いや、本物のラブレターだと思うぜ! 多分、アホで字が汚い女の子からの!(その正体は胸の内に秘めておこう…)」




fin.




ひなっち良い奴。



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