自慢とかではない、決して。




「はい、藤巻くん。あーん」
「…あ、…あーん…」

とある日の校長室。めでたくも先日から付き合うことになった大山と藤巻は、絶賛ラブラブ中である。
大山がケーキを片手にフォークを突き出し、所謂「あーん」を藤巻にしていた。仲睦まじい光景であるものの、男同士故に違和感が拭えないものとなっていた。

「おいしい?」
「…うまい。…けど…」
「?」
「その、なんつーか…周りからの視線的なものが…痛いっつーか、……」

1ミリの間もないくらいにくっ付いてソファに座る2人を、他のメンバーたちはジロジロと見ていた。
中には興味なさげにしている者もいたが、ほぼ全員といっていいほどからの視線を感じた。

「あ、お構いなく。俺たちのことは木だとでも思っといてくれ」
「愚民などがいちゃついていても苛立つだけだ。とっとと散れ。……あ、音無さんなら話は全く別ですが!」
「お前は人が言った矢先にぃっ!」
「黙れ愚民。トイレットペーパーの分際で」
「んだとてめっ…」
「あーもう、お前ら落ち着け!」

いつもの如く喧嘩を始めた日向と直井の間に音無が入る。そのことでしぶしぶと言い争いを止めた。
音無は小さくため息をついてから、こう言った。

「しかしまあ…大山と藤巻が付き合うなんてな」
「わりと仲いいのは知ってたけどさ」

音無に続いて日向も言う。
それに対して大山はといえば――

「藤巻くんって結構痩せてるよね。筋肉質じゃないっていうか…」
「そう言うお前はすげー華奢だろ」
「言わないでよ。ちょっと気にしてるんだから」
「…悪ぃ」
「あっごめん、そういう意味で言ったんじゃないんだ」

ソファが広いのをいいことに、今度はベタベタとしていた。どうやら、さっきのケーキは食べ終わったらしい。

「って無視かよ!」
「はぁ……」

「おい大山、音無と日向が何か言ってんぞ」
「え? あ、ごめん。何?」

「しかも聞いてなかったし…」

そこにガタン、と大きく椅子が揺れる音がした。揺れるというより、後ろの壁に勢いよく当たったという方が正しい。
そんなことをしたのは、戦線リーダーであるゆりだ。

「…大山くん……?」
「どうしたのゆりっぺ」
「ッ……ふ、不純…不純同性交遊はダメよっ!」

びしっと人差し指を指して声を張り上げたゆり。大山はキョトンとした表情をしてから、バレないよう薄くニヤリと笑った。

「大丈夫だよ、健全なようにするから。ね、藤巻く………藤巻くん?」
「へ、ぇ? えっああ…うん、ああ」

藤巻は真っ赤な顔をしてしどろもどろに答えた。
大山は藤巻に体ごと顔を向け、意地の悪い笑みを浮かべながら耳元で小さく囁いた。

(ゆりっぺもああ言ってることだし…今夜はもっと不純なことしようか?)

その言葉に、藤巻は全身を強張らせた。僅かに――期待をした瞳を向けて。




(ダメ…これ以上は妄想しちゃ…ダメ…)
(おいゆりっぺ、何ブツブツ言ってんだ?)
(要は皆さんアホですね!)




fin.




あくまでゆりっぺは通常運転です。





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