アドレサンス




軋むベッドの上。
二人で手を繋いでいて、その糸が切れたように、低い声で甘く囁く。

「…野田…」

手を離すと音無は、ほぼ勢いだけで野田を抱きしめた。
突然の抱擁に野田は驚いたものの、静かに目を瞑った。音無の腕の力は増すばかりで、少し息苦しいけど、それを言ってしまうとこの 温もりが消えてしまいそうで――怖くて言えなかった。

だが、抱きしめられていたのもつかの間。
音無は名の通り、音もなく野田から離れていった。そして、野田の最も嫌う言葉を放つ。

「…おやすみ、」

ドアノブを回してこの部屋を出て行こうとする。
そんな背中は見たくなくて、頭の下にあった枕を投げた。

「っばか野郎…!」
「…ごめん」

こんな暗闇の中でも分かるくらいに音無は切なそうな顔をして近づいてくるから、何も言えない。
無闇に手を伸ばすと、音無の手に触れた。
そのまま手をきゅっと握られ、唇へ近づけて軽く口づけられた。

「…ごめんな、野田。ごめん」
「……謝るくらいなら、それと同等くらに償え」
「ああ、分かってる」


俺たちの関係がバレるまでは、夜は明けない。

――時は刻々と迫ってくる。




fin.




シグナルPのアドレサンス(sm5666270)を聞いてたらこうなった。
フランス語で思春期だそうです。どこが思春期なんだ。






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