普段大口を開けて笑っている時はあまり思わないけど、黙っていれば十分に整った顔立ち。

鋭い瞳は意外と長い睫毛に縁取られていて、すらっと通った鼻筋と薄い唇からは、普段の彼からはあまり想像出来ないような品の良ささえ感じさせる。

細いけれど鍛えられた体は鋼のように堅い筋肉に覆われているし、短く揃えられた紫銀の髪は触ると意外と柔らかい。


これでこんな所で寝てたりしなければなあ、と思いながらリディアは眠るエッジを座ってまじまじと見つめていた。

柔らかい日差しが窓辺から降り注く宿の部屋のソファーで、エッジはぐっすりと眠っている。
天気がいいから外に行こうと誘いに来たのだけれど、あんまり気持ち良さそうに眠っているから起こすのも悪いかと思って、リディアはしばし待つことにしたのだ。

体の大きさに合っていないソファーからは片手と片足ははみ出ているし、はっきり言って行儀がいいとはとても言えない。

その飾らないところがエッジのいい所なんだけど、とリディアは困ったように笑った。

「黙っていれば、王子様に見えるのに」
「悪かったな」

返ってくる筈の無い答えが返ってきて、リディアはびくりと体を跳ね上げた。

驚いてエッジを見ると、閉じていた筈の瞳が開いてこちらを見ている。

「それだけじっくり見といて、出てきた言葉がそれかよ」
「……エッジ、もしかして、ずっと起きてたの?」
「当然。部屋に入ってきた時から起きてたけど?」

にやにやとやらしい笑みを浮かべながら、エッジはむくりと上半身を起こした。してやったりと言わんばかりの笑顔に、リディアは真っ赤な顔で抗議の声を上げる。

「起きてたんなら、なんで返事してくれなかったの?!」
「今したけど」
「今じゃなくて、部屋に入ってきた時!」
「お前、そもそも声掛けてねぇだろ」
「あっ」

そういえば、とリディアは部屋に入って来た時のことを思い出す。

いないのかと思って扉を開けたら寝てたから、そのままエッジに声はかけなかったんだ。

いつも部屋に入る時は、声なんかかけなくたって足音で誰が来たか分かるってエッジは言っているし、扉の前に来れば大体はエッジから声をかけてくれるから、それが習慣になってしまっていた。
今日は声が無かったからいないのかと思ったけど、一応覗いてみたら、ソファーでエッジが気持ち良さそうに寝ていたという訳だ。



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