『――相棒だよ、俺の』


そう言われて縮こまりながらも挨拶をした彼女は、とても可愛くて。同じ生き物とは思えないくらいだった。

怪我をしている為に寝かされている、白いシーツの隙間から零れる髪は、柔らかな金色でふわふわとしていて。頼りなげに開かれた瞳は、くりくりとしていて愛らしい。

何より、その子を見つめるあいつの瞳が余りに優しくて――気付いてしまったんだ。

初めてだった。
あんなにも優しくて、暖かい瞳をしている彼を見るのは。

――私には、そんな瞳を向けた事が無い。



*****


「――何やってんだ?こんなとこで」

ファルコンの船室の奥深く。壁に付いた小さな窓からじっと外を眺めているルカに、声を掛けたのはエッジだった。

大量の流れ星が降り注ぎ、その痕跡が痛々しく残る荒れ果てた世界。
その光景を確かにルカの瞳は捉えていたのだが、頭にあるのは別の事で、ただ流れ行く景色を遠くに感じながらぼんやりと立ち尽くしていただけに過ぎなかった。

返事をしないルカを追及するでもなく、エッジは隣に並ぶと壁に背を向けてどっかりと腰を下ろす。
それでもルカは窓の外を眺めたまま沈黙を続けていたが、やがておもむろに首を捻ると隣に座り込んだエッジを見下ろし、静かに口を開いた。

「……ねえ、あんたはさ」
「うん?」
「リディアに伝えないの?好きだって」
「……はあ?!」

突拍子のないルカの質問に、エッジは年甲斐もなく上ずった声を上げる。
思わずエッジが顔を上げると、じっと見つめるルカの不安げな瞳とかち合い、エッジは「ははあ」と一人納得したように頷いた。

「……いーや、何回だって言ってるぜ?そりゃもう今じゃあ毎日のように」
「……言いすぎるのも、どうかと思うけど」
「そうか?俺はどんだけ言ったって、足りねえぐらいだけどな。それくらい、俺はあいつに惚れてるからなあ」

開けっ広げに惚気られ、ルカは呆れて口閉する。
聞いた相手が間違っていた――そう思って溜息を吐くと、それを受けたエッジはにやりと笑い、ゆっくりと腰を上げた。

「――パロムの事か?」
「……!何で……?」
「見てりゃ分かるさ。で?なーに物思いになんざ耽ってんだよ。お前らしくねえじゃねえか」
「どういう意味よ、それ」

むっとした表情を隠そうともせず、ルカは立ち上がったエッジを上目できっと睨み付けた。


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