2*

「っ……あ、かし……く………」
「っ?ろおしら?」
「ちょ……しゃべら、ないで……く、ださい……」
赤司が先走りと唾液に濡れたペニスを頬張る姿は視覚的にも黒子を追いつめた。自分の足の間から不思議そうに見上げてくる赤司の頭を、思わず手で押し退けようとする。が、そんな事をものともせずに赤司はジュルッと先端を啜り、黒子が背を反らせた。
「ッア……!」
「んぅっ」
黒子は退けようとしていた手で思わず頭を深く押さえつける。唐突に喉の奥を刺激されて赤司は苦しそうに眉を寄せたが、抵抗せずにペニス全体を深く咥えこんで吸い付いた。
「ダ、メッ!……っあ…………」
「ンッ……」
黒子の切羽詰まった声と同時に一際強く頭を押さえ込まれ、咥内へ吐精される。勢い良く吐き出された精液に赤司は噎せそうになるが、口の中のものを噛む訳にもいかず、涙を溜めた瞳で黒子を見上げた。
「そんな顔、反則ですよ」
笑顔の黒子がペニスが入ったままで膨らんでいる頬を撫でる。そして、ゆるゆると腰を動かした。
「ングッ……ゥ……ッ……」
飲み込めずにいる精液を掻き混ぜ、無抵抗な舌に亀頭を擦りつける。二、三度繰り返せばペニスはすぐに固くなった。
「赤司くん、抜きますね」
「んぁ……」
精液を零さないように窄めていた口からチュポッと音を立ててペニスが抜ける。塞ぐものが無くなった唇からは唾液と混じって薄まった精液がトロトロと流れ落ちた。
「はしたない」
「ふぁ…………す、まない」
「次はきちんと飲んで下さいね」
呆けた顔で口元を拭う赤司の体を、黒子が引き寄せる。
「次は赤司くんを気持ちよくする番ですね」
黒子はクッタリと自分に身を預ける赤司の下腹部に手を伸ばした。
「ヒァッ!」
アナルを塞いでいるプラグの持ち手を掴み、軽く捻ると赤司の腰が揺れる。フェラチオをしてる最中も挿れたままだった入り口はだいぶ解れ、クチュクチュと濡れた音が響く。
「ドロドロですね」
明らかにローションだけでは無い液体に黒子が苦笑した。
「ンンッ……ふ、ぁ……」
振動を与えつつ内部をかき混ぜると、赤司は抑え気味の声を漏らしながら腰をくねらす。
「ぁ…………ぬ、ぬく、な……っ!」
ぐっぽりはまったプラグを引き抜くと、最初のくびれが見えたところで赤司が止めた。
「良いんですか?このままで」
「っあ!」
半分ほど埋まったままで浅いところを出し入れしていた手が、再度根元まで押し込む。
「っ…………嫌、だ」
赤司が急な刺激に仰け反った。
「ワガママですよ」
「テ、ツヤが、いじわるなんだ」
震える手で肩に掴まっている赤司の白い喉元に黒子が口付ける。
「意地悪もしたくなります」
浅く溜息を吐いた黒子に赤司が眉を顰める。
「なんですか?」
黒子が視線に気付て声を掛けるが、赤司は何も言わず俯いて白い首筋に顔を埋めた。
「君って人は……」
呆れたように言いつつ、心から慈しむように頭を撫でる。
「赤司くん、大好き」
「テ、ツ……ァァァァァッ」
甘く耳元で囁くと同時に、埋め込まれていたプラグを一気に引き抜く。ヌポッと粘着質な音を立てて抜け落ちたそれを投げ捨て、再び硬くなったペニスを入り口に押しあてた。
「まっ……」
「待てません」
「ンウッ!ヒッ、ゥ…………ッ……」
アナルが閉じるよりも早く黒子のペニスが穴を塞ぐ。自重も加わり、一気に根元まで飲み込んだ赤司の体が震えた。胎内も痙攣して黒子をキュウキュウと締め付ける。
「トコロテンですか……」
「ァ……ァ………」
衝撃で揺れる上半身を黒子が支えた。赤司の焦点は揺らぎ、二人の腹は彼の精液で濡れている。
「しっかりして下さい。これからですよ?」
黒子が両手で優しく顔を包み、呆けて半開きになった唇へ舌を差し込む。
「ン……ァ…………っ!」
成すがままで反応が薄い舌を黒子が噛んだ。
「テツヤ!何をする」
赤司がトン、と黒子の肩を押して血が滲んだ口端を拭う。
「勝手にトぶからです」
「そうしたのはお前だろう!加減しろ」
「…………」
「なんだ?」
「いえ。赤司くんでも加減しろなんて言うんですね」
「……セックスは例外だ」
「んふふ。意地悪してごめんなさい。でも安心しました」
「何がだ?」
「君は……今でも僕だけのモノだったんですね」
今まであった違和感はこれか、と赤司が納得する。同時に、不安を抱いていたのが自分だけでは無いと安心した。
「馬鹿だな……ッ」
全てを言い終えないうちに視界が反転する。
繋がったままで体勢を変えられ、赤司の体が布団に沈む。
「赤司くん……大好きです」
さっきとは違う泣きそうな告白に、答えようとした口は黒子の唇で塞がれ、離された頃に出てくるのは嬌声だけだった。





「京都、遠いですね」
「そうだな」
布団の端で丸まる背中を赤司が笑う。
「テツヤも来るかい?」
その言葉に黒子が硬直した。
シーツの衣擦れに肩が強ばり、背中に近付く気配に心臓が潰されそうになる。
「嘘だよ」
囁いて、ほんのり赤く色付いた耳たぶを甘噛みした。
「お前もきちんと約束を果たしてくれ」
赤司は小さな背中に腕を回して包み込む。
「僕は君達とは違います。バスケだって続けるかどうか……」
「続けるよ」
一際澄んだ声が黒子の耳に響いた。
「テツヤは必ずバスケを続ける」
「俺が言うんだから間違いない、ですか?」
言葉の続きを奪われた赤司が目を細めて、黒子のうなじにキスをする。
「まぁね。お前はバスケが好きだろう?だから俺から離れた」
「えぇ。君が僕に与え、そして奪った」
結果が全てというのは間違いでは無いと理解していても、帝光中の理念と彼らの戦い方は黒子を絶望させた。
「そんな酷い男を好きなのか?」
黒子は答えなど分かっているのに酷い質問だと、シーツを握り締める。
「大好きです」
君は、と聞きたいのに言葉が詰まった。
それが赤司から黒子が離れた理由の一つだ。
―――――コートの中だけでなく、自分の全部を否定されてしまったら……
黒子自身、全てにおいて完璧である赤司と肩を並べて歩く事など最初から期待していなかった。それでも知ってしまった温もりを失うのは怖い。明確に否定されるくらいならば、うやむやにしてしまったほうが幾分マシだと思えた。
「テツヤ」
「はい」
「こっちを向いて」
黒子がゆっくり振り返ると、思ったよりも近い位置にいた赤司が肩に手を掛け、コツンと額同士を当てる。
「俺はね、好奇心で男に抱かれようと思うほど酔狂じゃないよ」
至近距離の赤い瞳が黒子を射抜いた。
「むしろテツヤは俺の性格を充分に理解していると思っていたけどね?」
「……!」
他者を寄せ付けない程に尊く気高い男が、体裁も気にせず自分を優先し、更には女役に甘んじている事実。
黒子はそれに気付いた瞬間、己の愚かさに打ちのめされそうになった。
「ごめんなさい、赤司君」
「何に対して?」
「君を……君の心を疑った事に対して、です」
「後は?」
「僕の弱さで君まで傷つけた」
自己中心的にも、最上の愛を捨てようとした。ここで気付けなかったらという恐怖に、黒子から涙が零れる。
「よくできました」
瞼に優しく触れた唇は、今まで交わしたどんなキスよりも満たされた。
「もう二度と捨ててくれるなよ」
「はい。もう、絶対に逃げません」
赤司を真っ直ぐに見つめて誓う。
まるでプロポーズのようだと赤司が笑えば、黒子はプロポーズですと真顔で答えた。
「来年はきちんと祝います」
「期待しないで待ってるよ」
「赤司君も、お願いしますね」
「もちろんさ。覚悟しておけよ」
この数ヶ月など吹き飛ぶような幸福のまま、二人は抱き合って目を閉じた。


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