Shadow Phantom | ナノ
 19:金庫セキュリティ発動

 外から聞こえた発砲音に、僕らは急いで敵アジトの外へと出た。音はすぐ近くから聞こえた。遠隔操作型のスタンドは、スタンドが攻撃を食らっても本体は傷つかないが、スタンドを使っている間は無防備状態になるデメリットがあるのを僕は知っている。リーダーも同じことを思っているのか、その表情には焦りが見えた。ナイフか拳銃を持っているのなら、なんとか太刀打ちはできるかもしれないが……。
 メローネが隠れていた場所にメローネはいなかったが、コンテナには銃弾による凹みがあった。それを確認するのと同時に、今度は二発打ったような音が響いた。
「ノクターン!」
 スタンドを出しメローネの居場所を探知する為に近辺を這い巡らせると、今の居場所から少し離れた灯台へと移動していた。
「あの灯台の方です!」
 リーダーとベイビィ・フェイスを誘導し、片目を閉じメローネを狙う敵を探した。灯台の後ろに一人とコンテナの影に二人が銃を構え、メローネを狙っていた。メローネも現地で銃を調達したのか、手には握られていたが今の状況は少々まずかった。
「ノクターン……殺れっ!」
 灯台の後ろにいた一人は殺せたが、残りの二人はチラチラと当たる光のせいでうまく身体に狙えなかった。狙いが外れコンテナが派手に吹き飛んだせいで隠れていた二人はその場から離れ、僕たちに銃口を向けた。  
「……メタリカッ!」
 敵の二人の身体から大量のメスやらハサミが飛び出し、膝から崩れ落ちた。一人が死ぬ間際に放った銃弾が僕の肩を掠った。
「…………メローネ大丈夫?」
 三人の死を確認し、僕たちはメローネに安否を聞いた。肩と脇腹の所に穴が開いていたが、沢山着ていたおかげでなんともなかったらしい。
「オレより凜のそれ…………舐めて消毒してあ・げ……ぐえっ」
 最後にまた気持ち悪いこと言いそうだったので、軽くチョップをした。何か言おうとするリーダーに、大丈夫ですから戻りましょうと促したのだった。

 敵のアジトに戻り、中に入ると血の生臭さが充満していた。ボスの部屋に足を踏み込むと、ドアの近くには太った男が転がっていた。資料に載っていたこの組織のボスだった人物だと思うが、なにせ顔から刃物が飛び出てて確認しずらかったのだ。
 小さな組織のボスにしては、そこは結構良い家具が揃っていた。壁には贋作かもしれないが、ゴッホとかどこかで見たことはあるっていう絵画が飾られている。窓の近くにはなかなか大きい水槽が置かれていて、水草や側面に穴が開いている小さな植木鉢?のような物もあり、世間で言うアクアリウム的な設置(詳しくなくて申し訳ない)になっているが、何か違和感があった。
 そう、こんなに大きく広くて綺麗にされている水槽なのに、泳いでいるのは僕の握りこぶしぐらいの大きさの青い色をしたベタという魚しかいないのだ。魚の癖にずいぶん待遇がよろしいんだなと思った。
「この金庫、いかにも怪しいよね」
「うむ……ベイビィ・フェイスで分解とかできるか?」
「やってみるよ……」
 僕が水槽に気を取られている間に、二人は金庫を見つけていた。会話に耳が入り二人を見ると解除方法がわからないから、メローネのスタンドで壊すらしい。中には何が入っているのかなと、ワクワクしていると背後からポチャンと水が跳ねる音が聞こえた。
「跳ねる音って……」
 後ろを振り抜けば、さっきまで優雅に泳いでいたはずのベタが宙を浮かんでいた。そのベタの背後には、骨組みが全て金属のような物で構成された魚の骨が佇んでいる。油が切れて鳴るようなキシキシと音を立てて目玉に付けられた歯車をグルグルと回してこっちを見ていた。リーダーとメローネも異変に気づきその魚を見ると、ベタのスタンドはまるで笑っているかのように口元の金属を曲げて、口を大きく開いた。キリキリと口の中から、どこにそんなのを収納させていたんだと思わせるような大きな矛を、狙いを定めるかのようにリーダーとメローネに狙いを定めていた。
 僕が二人を突き飛ばすのと、矛が発射されたのは同時だった。メローネはともかく大きな体のリーダーを突き飛ばしても、ほんの僅かしか位置は変えられなかったが二人に攻撃が当たることを回避できた。
「…………ぐっ」
「「……っ! 凜っ!」」
 なけなしの影から向かってきた槍を弾き飛ばそうとしたが、威力が弱く逆にマズイ事になった。狙いが外れて、僕の脇腹をざっくりと斬りつけられていた。貫通しなかっただけマシかと思うが、血が吹き出し出血が止まらず痛みで片膝を付いた。僕もメローネみたいに雪だるま状態だったら軽症で済んだと思うが、あいにく上着を脱いでいつもの仕事着だった。血は押さえている手のひらから指の間を流れ、どんどん溢れ出て革製の手袋を台無しにする。
 僕がこうしている間にも、魚のスタンドは次の槍をリーダーとメローネへ向ける準備をしていた。
「メタリカッ!」
「ベイビィ・フェイス!」
 二人のスタンドが同時に攻撃し、本体のベタから血が吹き出ると床に落ちブロック状になって消えた。
「おいっ! 大丈夫か!?」
「凜のバカバカっ! なんで庇うんだよっ!」
「……僕を下に連れて行って。早めにお願い」
 口の中が乾いていく、思考回路がどんどん鈍る前に二人にそう告げるとすぐに身体を抱きかかえられて、1階へと降りた。

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