Shadow Phantom | ナノ
 18:筋肉こそ最大の防寒具である。

 リーダーが取ったホテルは老人夫婦が経営している小さなホテルだった。お世辞で豪華とは言えないが、ちゃんと掃除が行き届いているし簡単な物だけど朝食が出るそうだ。ただちょっとばかし客室がそんなに無いらしく、三人部屋のみだった。せめて二部屋をと頼んでいたが、申し訳なさそうにする夫婦にリーダーはバツが悪くなり三人部屋になった。
 部屋はベッドが3台、エアコンにクローゼットとドレッサーとテーブルが1台ずつ。三人掛けのソファーと椅子もある。奥さんの趣味なのか黄色と薄ピンク色でまとめられ、綺麗な花が飾られていて可愛らしい部屋だった。ムサイ男二人にはどこかアンバランスだなと、心の中でそっと思う。
 それぞれ自分の荷物を置くと、僕とメローネはソファーに座り、リーダーは椅子に座ってテーブルに書類を置いた。
「さて、今日の段取りを教える。……任務実行は午前1時。場所はここだ……オレと凜は主に始末担当、凜は1階をオレは2階に居る者を始末する。資料が正しければ、2階にボスの私室があるはずだ」
「Si、リーダー」
「メローネは……準備はできそうか? メローネは主に死体の始末だが」
「まぁ、何とかなりそうだな。夜までには仕上げるようにするよ」
 まだ僕はメローネのスタンドを知らないが、話を聞くと準備が必要があるスタンドなのだろう。いちいち殺すのに準備するのなら、結構大変そうだ。
「各自、書類にしっかり目を通したか? 通したのなら処分を……」
 書類の内容を頭に叩き込み、近くの影に放り込むとノクターンが瞬時に粉々にしてくれた。あれじゃあ、いくら拾い集めても読めやしない。トイレにでも流せば完璧だ。我はシュレッダーではないと少し怒っていたが、後でどうせご機嫌になるんだから大丈夫だろう。視線を感じ二人に目をやると、どこか呆れたような目でこっちを見ていたが、気にしないことにする。紙を燃やす臭いが鼻についた。

 午前1時。場所は港近くの2階建ての一軒家。場所が場所であり、潮風もあるのか酷く冷え込んでいた。僕は任務執行前までに着る捨ててもいいダウンを着て、リーダーがいつもの仕事着を着て来たのに驚愕し、メローネのまるで雪だるまのような着ぶくれにかける言葉を失っていると、『オレは遠隔操作型だからじっとしないといけないのっ』と教えてくれた。
「メローネ、スタンドは?」
「ここにいるぜ」
 そう答えると、メローネの後ろからひょっこりと子供ぐらいの大きさのスタンド?が出てきた。人っぽいけど、頭はギザギザな角のようなものが生えとても異質な感じがする。そしてさっきまで持っていなかったはずなのに、メローネの手にはノートパソコンを持っていた。
「……それが君のスタンド?」
「そう。これがオレのスタンド『ベイビィ・フェイス』。オレがこいつからベイビィに指示するんだ……いいかいベイビィ? この二人は攻撃しちゃぁ、いけないからな? わかったかい?」
『はい。メローネ』
 メローネの問にスタンドはまるで子供のように、首を縦に振った。メローネはこうやっていろいろ教育をしないといけないんだよと言った。
「凜はオレのスタンドを見るの初めてだったね。まぁ、酒も煙草も麻薬もやらない君じゃ、いい母親にはならないね。……そういえば、君眼鏡はどうしたんだい? 視力は悪いんだろ?」
「必要ないんだ。暗闇ではスタンドのおかげで目が利くんだよ。どんな性能のいい暗視ゴーグルも玩具に感じるほどね」
 目元をトントンと叩けば、君が死んだらその瞳オレに頂戴ねと気持ち悪いことをねっとりと言われた。
「お前ら、お喋りは終いだ。任務を開始する」

 ネアポリスの土地を離れる前に、予め敵アジトのブレーカーの位置と消える場所のレバーを調べてもらってよかったと思う。ドアを蹴破る前に1階部分のレバーを下ろし、僕たちは中へと潜入した。急に電気が消えたのに気がついたのか、中が騒がしくなった。リーダーはすばやく2階に駆け上がったのを見送ったあと、中にいた計10名の命を刈り取った。殺す時は苦しまないように首ちょんぱなど一瞬で終わる殺し方をするが、何人かは微妙な位置にいたので申し訳ないが串刺しにさせてもらった。1階が静かになると、上の方からドタバタと人が暴れる音やら悲鳴やらが聞こえたが数分もしないうちにそれが終わった。殺害した者たちの懐を探って1階には生存者はいないのを確認し、2階に上がればそこは下に負けず辺り一面血の海と屍が転がっていた。メローネのスタンドが転がっている死体で遊びながらも肉塊をブロック状にし、瞬く間に椅子にへと変えていた。
「リーダー。こっちは終わりましたよ」
 部屋をキョロキョロと見渡すと、確かにそこにいるのはわかるのに姿が見えなかった。声を掛けると、その場所からどんどんリーダーの姿が現れた。
「!」
「これはオレのスタンド『メタリカ』を使ったステルス能力だ。……さて、メローネを呼んで部屋を探さない……」
 リーダーの言葉を遮るように、外から発砲音が響いた。

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