Shadow Phantom | ナノ
 14:任務後のおやつ、日本円にして約2500円

 霧坂の初任務に付き添いで行った二人からの話を聞く限り、全て問題なしの一言だった。
「何一つ無駄な動作はなかったな」
「全員綺麗に首チョンパ。掛かった時間は5分も使ってなかったと思うぜ。オレが瞬きする間に全員殺しちまった」
 プロシュートは関心したように、肺一杯に吸い込んだ煙を輪っか状に吐き出した。
「それにしては戻ってくるのが遅かったようだが……」
「それはだなぁ……夕飯前の軽い食事に付き合ってたかなぁ。消耗が激しいからすぐお腹が減るんだとか言ってしっかり食べてたな。ほっそい身体にしてはよく食ってたぜ」
「その後に、報告書を作成していたから時間掛かった。でも、時間配分は凜の予想通りだったな」
 おっ、そうだなと同調したホルマジオとプロシュートをオレは不思議そうに見ると、数時間前の事を話すのだった。

「2時間半ってとこかな」
 リゾットから任務についての説明を受けた後、凜とホルマジオとプロシュートの三人が話していた時だった。任務書を眺めていた凜がポツリと呟いた。
「2時間半?」
「うん。トータルで考えて今日はこのぐらい時間かかると思う。移動で道が渋滞してなければ、往復で30分。任務で5分、食事に1時間、報告書の作成で30分かな。これで2時間5分だけど、信号に引っかかるかもだから余分に25分を足した」
「お前いつもそんな事考えてから、仕事やってるのか?」
 ホルマジオが変なやつだなと言いたそうな表情で凜の顔を見て言うと、プロシュートは癇に障ったのか不機嫌そうな声を出して凜に詰め寄った。
「おい、凜凜凜よぉ〜一体どういうつもりだ? 暗殺の仕事なめてるのか? いつどんな状況に陥るかわからねぇし、そんな呑気な事考えてるやつなんてすぐに足元すくわれて殺されるぞ」
「あぁ、心配してくれてるんだね。どうもありがとう。……でも、前のチームでは僕がほとんど暗殺役だったし、今日の対象者は10人。もし他に隠れていても問題ないよ。全員一撃で始末する……5分もかからないのを賭けてもいいかな」
 怖い表情をするプロシュートとは反対に、凜はただ穏やかに笑みを浮かべ表情とは裏腹に物騒な事を口にした。少しの間沈黙して顔を突き合わせていたが、プロシュートは毒気を抜かれたのか一つ溜息をついた。
「危なくなっても知らねぇぞ」
 呆れたように言うと、ポケットからタバコを一本取り出した。

「なぁ、なんでお前眼鏡かけないんだ? 視力悪いんだろ?」
 任務先に到着し、車に降りた凜の目元にはいつもの銀縁の眼鏡はなかった。それを疑問に思ったホルマジオが尋ねる。
「うん、悪い……暗い所で眼鏡をかけてると、逆に見えすぎて気分が悪くなるんだ。こういう所では必要ないんだよ」
「それは、スタンドに関係するのか?」
 横から口を出してきたプロシュートに頷き肯定すれば、二人はそれ以上追求してこなかった。それから三人は、無言で対象者達が潜む倉庫へと足を運ぶ。その倉庫はシャッターが閉め切っており、窓は内側から板を貼られているのか中の様子がわからないようになっていた。
「さて、これから暗殺チームでの初任務を執行したいと思います。今日は立会人がいるから、少し派手にやらせてもらうね」
 凜は少しおちゃらけたように言うと、自分のスタンドを出した。倉庫へと伸びている電線を全てスタンドで切り離すと、暗くなったせいか倉庫の中が騒がしくなった。正面のシャッターを凜のノクターンがぶつかると、大きな音を立ててシャッターは内側へと飛んでいった。三人は倉庫の中を素早く入り込むと、突然の事に状況が理解できない男たちが月明かりに照らされた。中に居たのは任務書とは異なり15人。凜が手を振りかざした瞬間、15個の頭部が血飛沫を飛ばしながら宙に舞った。首と離された身体はビクビクと痙攣し、落下した頭部はゴツゴツと嫌な音を立てて血溜まりを作る。
「…………」
「…………」
 倉庫に潜り込んでから5分も掛からなかった。予告通り全員一撃で死亡。あまりの手際の良さにプロシュートとホルマジオは言葉が出なかった。お見事としか言えなかった。
「念の為に確認したけど、全員死亡。あとは報告書だけど、アジトの夕食前に軽く何か食べていかない?」
 プロシュートとホルマジオが言葉が出ない間に、凜は一個一個頭部を持ち上げたり心臓の音を聞いて生存確認をしていた。声を掛けられ我に帰った二人は、凜の誘いに承諾した。

 任務後の凜は実によく食べた。アジトに戻れば今日の食事当番が飯を作ってくれているぞと止めたが、勿論それも食べるよと笑っていた。
「僕のスタンドはパワー、スピードが自慢だけど消耗が激しいんだよね。だから、任務後はいつもお腹ペコペコなんだ」
 そう言いながら、前菜に肉にドルチェにとガッツリ食べていた。そして車の中で報告書を仕上げアジトに戻ると、作られていた飯をペロッと平らげたのだった。

「という訳さ、ちょっと忘れていたがアジトに戻って時計見て凜が予測していた時間配分通りだったという話し」
「まぁ、あれなら次は一人でもじゅうぶんだろうな……オレはあいつがスパイじゃないと願いたいばかりだぜ」
「…………その件だが、霧坂についてソルベとジェラートに調べさせている所だ」
 ホルマジオとプロシュートにそう言うと、あいつ等ならしっかり調べるだろうよと頷いた。どこか一段落したと思う空気だったが、それぞれが疑問に持っている事があった。
『死体は残した方がいいですか? それとも消した方がいいですか?』
 任務前に霧坂に問われた質問について、三人とも話題に出すことができなかった。

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