Shadow Phantom | ナノ
 12:そのスーツ、耳が付いてて可愛いねなんて言えるわけない。

「君が相手なんだね。一つお手柔らかにお願いしたいとこかな」
「ケッ。何がお手柔らかにだっ! テメェの事はずっと気に入らなかったからなっ! ボコボコにシメさせてもらうぜ〜」
 僕の目の前には、いつものようにどこか苛立っているギアッチョだった。僕は開始の合図の前に、眼鏡を外してポケットに閉まった。
「まぁまぁ、それよりもギアッチョって急行列車に跳ね飛ばされても生き残れる?」
「あぁっ!? そんなもん跳ね飛ばされる前に停めてやるよっ!」
「……それを聞いて安心したよ。でも、悪いけどさっさと終わらさせてもらうね」
 僕は胸元のリボンをキツく締め上げ、なりを整えた。リーダーはまるでレフェリーのようにスッと手を上げて、開始と言うのと同時に手を下ろした。

 これが殺気なのか季節の気温かはわからないが、開始と同時に空気がやたら冷えたような気がした。
「ノクターン」
 静かにそう呼べば、陽炎のように揺らめきながらノクターンは現れる。スタンドを出すと、周りがちょっとざわつくのが耳に入った。
「僕のスタンド『ノクターン』って言うんだ。ギアッチョのスタンドも見せてよ?」
「ふんっ、テメェのスタンドは化物みたいだな。景色と一体化して見えるのに、黒いでっかい骸骨が空間を浮かんでやがる。気味が悪い……それに、呑気に喋っているが、すでにオレのスタンド能力は発動しているぜっ! 粉々にするのは勘弁しといてやるよっ!」
 すでに発動させている……? そういえば、さっきよりもやたら寒くなっているような。まだ11月下旬なのに、吐く息が白い。
「ノクターン! ギアッチョを吹っ飛ばせ!」
 嫌な予感がしギアッチョを倉庫の方へ叩きつけたのと同時に、地面に氷が這い始めた。素早いスピードで僕に近づく氷を見て慌ててノクターンを呼び戻し、その場から離れた街灯の上に登った。そういえば、彼の名前を日本語にすると『氷』だ。もし、予想通りなら本当に早く終わらせないとマズイと破壊された倉庫を見た。
「ちょっとやりすぎちゃったかな」
 倒壊した倉庫からなかなかギアッチョが出てこず、少々不安に感じたがそれは杞憂だった。白いスーツに包まれた彼が、地面を滑るようにこちらに戻ってきた。
「あれがギアッチョのスタンド……? 見たところ一体型のスタンドってとこかな」
 気温がまた下がったように感じた。上がシャツとベストだけじゃ耐えきれない程の寒さだったし、さっきの倉庫は氷アートのように綺麗に氷漬けされている。もし、生身であれを食らったら生き残ることは難しいだろう。そして今立っている街灯の上も間もなく凍ってしまうだろう。空間にスタンドで足場を作り、さらに高い場所にへと登るとギアッチョが僕の方にへと顔を上げた。
「そんな所行って逃げられるとでも思ってるのかぁ〜? オレの『ホワイト・アルバムは』超低温によって空気中の水分を凍らせられる。テメェの逃げる場所はねぇんだよっ!」
 ギアッチョの怒涛が海岸に響く。空気が凍てつき、睫毛や髪の毛が凍ってくる。そろそろタイムリミットだ。
「『ノクターン』エネルジコ・ペザンテ(力強く、重々しく)!」
「ホワイト・アルバムッッ!」
 足場が無くなり、身体に浮遊感が襲い落下する。ギアッチョの真上からノクターンがプレスハンマーの如く叩きつけた。轟音を響かせ地面を抉り、あっちこっちに大きなヒビが走った。ビシビシと身体のあちこちを凍らせながら、落下する僕をノクターンが受け止めた。抉られた地面の中にはスタンドを解除した姿のギアッチョが横たわっていた。ピクリともしない彼を見て、殺してしまったのかと慌てて近寄り、声をかけ揺さぶると呻き声を確認した。
「この勝負、霧坂の勝ちだ」
 いつの間にか傍にいたリーダーの一声によって、スタンドバトルは終了したのだった。

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