Shadow Phantom | ナノ
 9:光が灯らない家

 ネアポリス駅からちょっと入り組んだ路地を抜けた所に僕の家はある。
 駅から歩いてたった数分程度。閑静で近くにはスーパーがあって、立地的にかなりの良物件だと思う。もしこれが北イタリアだったら目玉が飛び出るくらいお高い物件だが、ここの地区は治安が凄まじく悪いから安く買えたのだ。
 こじんまりした僕の家は一階建てで、部屋数は2LDKにバスルームとトイレは別。バスルームは日本仕様に改装してあり、一番気に入っている。アメリカとかと同じでイタリアでも家の中で土足の家庭は多いが、それは馴染めないので玄関からカーペットを敷いて裸足で過ごせられるようになっている。
 そして基本的に照明器具は使っていない。せいぜい普段使っているのは良い雰囲気を作れる間接照明ぐらいで、来客がなければあっちこっちの電球は外している。たぶんだが、近所の人にとっては常に真っ暗なのに、生活音が聞こえてくる怪しげな家だと思われているだろう。

 とっぷり暗い室内で、ノクターンは機嫌がよさそうに蠢いていた。聞けば、あの人達をたいそう気に入ったようだった。凜はそう思わないのか?って問われたが、僕はなんとも言えなかった。
 ギャング組織でも、数々の修羅場を乗り越えたであろうチームの人達だ。自分の作り笑顔なんてとっくに気が付かれているだろうし、やっぱり元チームのせいかどこか疑いのある視線をリーダーから送られていた。自分は別に上の立場になりたいという欲はないが、チームからのはみ出し者にはなりたくないとも思っている。チームの中にうまく溶け込めるだろうかと不安だった。
 ノクターンはそんな僕の心境に気がついたのか、傍に寄ってきて陽炎のように揺らめきながら僕の身体を包む。この人肌よりも少し低い温かさは、ぬるま湯に浸かっている気分になってどこか心を落ち着かせてくれる。だんだん安心してきたお陰なのか、ずっと緊張していた身体が解れ疲れが一気に来て眠気に襲われる。
 明日は、アジトに荷物を運ぶのをホルマジオが手伝ってくれるらしい。この眠気が覚めないように、布団の中に潜り込んで夢に沈んだ。


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