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隠し事の終着点

 ※今回の話には、妊娠&子供ネタが使われています。そういう系が苦手な方はご注意を。


 力を無くした手からスルリと滑ったそれは、無機質なタイル床にカタンと小さく音を鳴らして落ちた。
「…………どうしよう」
 私の独り言は誰に聞かれることなく静かに消える。ずっと回りっぱなしになっている換気扇の音が遠く聞こえるほど、自分の鼓動は激しかった。
 落としてしまったそれには、『陽性』である事を無慈悲に教えてくれていたのだった。

 ――南ヨーロッパに位置するイタリア。美しい国の裏側では、ギャングに関係のない一般市民でさえ、『麻薬』という物に苦しまされていた。
 とある人は、孫が麻薬に手を出した。とある人は、麻薬取引を偶然見てしまった親が殺された。とある人は、すでに手遅れな麻薬中毒者によって殺害された。……そんな事がここ数年頻繁に起こるようになり、住人達は表面上は何事ないようにしていても、その心境はとても穏やかではなかっただろう。
 だが、ようやくなのだ。人々の不安を脅かせていた元凶はいなくなり、新たな輝かしく若いボスはその『麻薬』を無くす為に動き始めたのだ。成果はまだ見えてはいないが、着々と浄化活動は進んでいる。
 ……そんな皆が慌ただしくしている中で、判明してしまった妊娠だった。検査薬の判定は誤ってはいなかった。エコーに写ったまだまだ小さな黒の影は、確かに生命が宿っていることを証明させた。
 "おめでとうございます。懐妊なされていますよ"こっちの事情も知らない医師は、ニッコリとした笑顔で私に祝福の言葉を投げた。あぁ、やっぱりと現実を受け止め、引き攣っていただろう笑顔で私は返事をした。
 フラフラとした足取りで病院から出ると、改めて渡されたエコー写真を見直した。まだ人の形すらなっていないこの影が、私とミスタの子供なのか。そう思うとなんだか不思議な気持ちになり、ごちゃごちゃになった感情が少しずつ落ち着いてきた気がした。
 私はギャングだし、人殺しをした事は勿論ある。後ろ指さされる存在で、人並みの幸せなど得られないと思っていた。だけど、ディアボロが統士していた組織を裏切る死闘の中、今までただの仲間だとしか思っていなかったミスタとまさかの恋人になった。
 デリカシーのない所はあるけれど、あの楽観的な考えや年上として頼もしい一面もある彼に惹かれいてた。好きな人との子供、嬉しくないと言えばそれは大嘘になる。戸惑いは確かに大きいが、ミスタとの子供を産みたいと私の心の奥底はすでに決断していた。
 だけど……いざ産もうと思っていても、それをボスであるジョルノが許してくれるのだろうか?かつてはまだ新入りで仲間ではあったが、そんな彼に今は忠誠を誓っている身でもある。今はそんな場合じゃないでしょうと、出産する事を諦めてくれと言われてしまったら私は頷くことしか……。
 不穏な気持ちを抱いたまま、私は思い足取りで組織本部へと足を向けたのだった。
 

 少しだけ時間を貰えないだろうか?という願いに、ジョルノは何も聞かずに"部屋に誰も入れないでください"と、事務作業をしていたフーゴに告げた。
 二人は私のいつもの様子と違うことに気がついてくれたらしい。頼まれたフーゴは、ごゆっくりと私に短く言うと静かに部屋を出ていった。その気遣いが嬉しいと思いつつ、緊張感が湧いた。
 気まずそうに突っ立っている私は、ジョルノからソファーに促されゆっくりと腰を掛ける。
「……大丈夫ですか? そのッ、顔色が悪い」
「うん、大丈夫。忙しいのに時間を割ってくれてありがとね」
 そう言うと、ジョルノは軽く頷いただけで私の口から本題が出ることを待っているようだった。そんな彼の様子を見て早く言わないといけないのに、何度も口を開くがなかなか言葉が出ない。
「あのッ、あのね……」
 そんな先の進まない言葉を繰り返しているうちに、ジョルノは突然私の手を握った。自分でも気づかなかったが、ずいぶん震えてしまっていたらしい。手を握られて初めて気がつくと、恥ずかしい方が強くて冷静さが戻ってきた。
「大丈夫です。落ち着いて話してみてください」
 私のほうが歳上なのに、やっぱり彼のほうが大人びて見えてしまう。落ち着こうと何度も深呼吸を繰り返し、ようやく私は伝えないといけないことを話した。
 ……言いたいことを話し終えると、ジョルノはまるで信じられないと言いたそうに目を大きく見開かせていた。少し考えるような難しい顔をすると、やがて口を開いた。
「そうですね……このジョルノ・ジョバァーナの個人としての意見を言いましょう。名前、おめでとう。ミスタが父親っていうのはちょっと想像しにくいですけど、彼ならきっといい父親になると思うし、勿論貴女もいい母親になりそうだと思います。仲間としてボクも大変嬉しいです」
「ジョルノ……」
「そしてこれは……パッショーネのボスとしての言葉です。……名前、正直言ってこの新生パッショーネはまだまだ非常に不安定な状況だ。ブチャラティを始めとした皆もそうだけど、ミスタにも色々と動いてもらいたい。できる事なら今の彼に余計な気がかりを負わせたくない。……貴女の妊娠は大変喜ばしいことですが、正直言っていろいろなサポートをするのに手が回らないんだ。だから今回は……」
「ッ!! あのねジョルノ!」
 予想をしていた答えを聞きたくなくて、私は遮るようについ大声を出してしまう。ジョルノが息を呑む音が聞こえた。
「私、まだミスタにはこの事言っていないの。……そして、ミスタには何も言わないで産むつもり」
「ボクは反対しますよ……。子供を片親で育てるなんて、並大抵な辛さじゃあないですよ? ひとり親で若いってだけで色々言われたり、サポートなしでは……」
「ありがとうジョルノ。勿論、それは重々承知。それでも……私はこの子を堕ろしたくない。辛い思いはいっぱいするけれど、私腹括った。覚悟はしている」
「……名前」
 ジョルノの顔は絶句した表情だった。彼のそんな顔は今まで見たことがなかった。本当に酷く理解不能だとも言いたげそうでもあった。……そう思われても仕方がないと私自身も理解していた。子供一人育てるだけでも、相当な労力や精神力は削られる。本来なら夫婦、そして周りの身内などのサポート有りきで子供というのは育てられる。
 だが、その重労働を一人でやるというのだから傍から見れば正気沙汰とは思われない。それでも……私はミスタとの子供を産みたかった。
「はぁー………………。貴女って結構馬鹿な人ですよね」
「うっ」
「まぁ…………仕方がないです。これは名前だけの責任ではないですから。そうですね……名前、少しだけ準備する期間をください。今ボクができる限りの方法で、貴女を守りましょう」
 相当呆れた様子ではあったが、ジョルノの思いかげない言葉に私は目を瞬かせる。その言葉を聞く限り、私はこの子を諦めなくても……。
「……ジョルノォ〜!」
「泣かないで下さいよ……そんなに泣いたら目が腫れて、それこそミスタに勘付かれますよ」
 我慢していた糸が切れたかのように、私の涙腺は一気に崩壊した。子供のようにボロボロ涙を流す私を見てジョルノはまた呆れたように溜息を付いたが、溢れる涙を花に変えてくれ、落ち着くまで部屋に居させてくれたのだった。


 ジョルノにカミングアウトをしてから一週間後、私を含めブチャラティやアバッキオ、ミスタにナランチャにフーゴとお馴染みの元護衛チームと、何度か会ったことのある構成員達はボスのジョルノによって呼び出された。
「どうしたんだジョルノ? 急に話したいことがあるって皆を集めてよ?」
 ミスタが軽くジョルノに話をふれば、ジョルノは少し咳払いをし話を始めた。
「今まで組織の最大収入源は『麻薬』だった。でもそれを辞めた今、皮肉ながらも組織の収入源は大きく減っている。そこで色々考えましたが、組織の活動範囲を広げようかと思っているんです」
「……イタリアだけじゃなくて国外って事か?」
 ブチャラティが問うと、ジョルノはその通りだと頷いた。
「えぇ……。ボクの故郷でもある『日本』を狙っています」
 イタリアから約12時間は離れている遠い国の名前が出ると、その場にいた者たちはざわついた。……そうか、確かジョルノも私と同じ故郷だったんだっけと。私はぼんやりと聞いていた。
「日本人はイタリア人と同じ、美味しい食事に目がありません。まだ数は少ないですが、他の国の料理店もあって人気は出ている。……そこで、日本にイタリア料理店を開こうかと思っているんです」
「別にかなり離れた日本じゃなくても、割りかしここから近いスペインだって美食家じゃあねぇか?」
「まぁ……麻薬よりかは健全だし、ヒットすればそこそこの収入になると思うが……。下手にやるとあっちのギャングとか、警察に目をつけられないか?」
 ジョルノからの突然の誓言に、それぞれ思い思いのことを口にする。確かに日本で美味しいイタリア料理店を出せば、人気は間違いなしだろう。だけど、どうしてまぁ……と私は考え込んでいると、ジョルノとばっちり目があった。
――まさか。あの物言いたげな目は、絶対私に関係があるものでは?それなら急にこの話が出てくるのも納得がいく。
「えぇ、そこなんです。この案が出た時に、いろいろフーゴと話してみたんですが、まずは現地調査が必要なんです」
 ジョルノの横にいたフーゴは、自分に話を振られると黙って頷いた。
「なんだよぉ〜まだまだ出だしの所だったのかぁ。全員集めるから、すでに店とか決まってるのかと思ったぜ」
 話を話半分に聞いていたナランチャが呑気な声を出すと、それに同調するかのようにミスタも相槌を打った。
「一番の本題を言えば、その現地調査は名前さんに行ってもらう事になったんです」
 その発言に、賑やかだった場は一気に静まり返ったのだった。


「――なぁ」
「……どうしたの?」
「日本に行くこと……聞いていたのか?」
「……はっきり頼まれたのは、さっきが初めてだよ」
 話し合いから解散後、私はミスタに引き止められた。あまり人気のない公園まで散歩という久しぶりのデートのような事をしていた。いつもはうるさいくらいに陽気なミスタだったが、その道中は押し黙っていてずっと無言だった。
 ベンチを見つけ、そこに腰掛けるとミスタは思い立ったように私に訪ねてきた。曖昧な笑顔を浮かべ、その真実を濁すように答えるとミスタはまた黙り込んで何かを考え込んでしまった。
 束の間ではあるが、せっかく久しぶりに二人っきりになれたのに。甘い空気どころか、まるで別れ話をしているカップルのようだ。あぁ、嫌だ。一緒にいられるのも僅かで、何年になるかわからないぐらい離れ離れになってしまうのに。せめての残りの時間だけは楽しく過ごしたい。
 そう考えても、現実はそう甘くはなかった。繋いでいる手に力が入ると、それに返してくれるようにミスタも握り返してくれる。
「…………土産、楽しみにしておくぜ。あぁッ! それと、浮気なんてしないでくれよ? って言っても、仕事だからそんな時間はねぇか」
 わざと明るい声を出されるのが辛かった。彼のことだから冗談交じりでも行かないでくれよぉ〜と言いたいんだろうけど、この辞令を出したのがボスだと冗談でも口には出せない。
「それはミスタもッ! 只さえあっちこっち目移りしちゃうんだから、離れている時に悪さしないでね!」
 これ以上苦しい雰囲気に包まれるのが嫌で、私もわざと明るい声を出してミスタの軽口を返した。本当のことを打ち明けたくても、それができない事ほど辛いものはない。
「……怪我しねぇで、元気に帰ってこいよなっ!」
 まるで犬を撫でくりまわすかのように、グシャグシャと私の頭を撫でてくれると手付きとは真逆に優しくキスをされる。思わず泣いてしまうのを、空いている手で皮膚に爪を食い込ませて我慢をしたのだった。


 スマートに渡された名刺を見て、私は目を丸くした。
「スピードワゴン財団って……あのスピードワゴン財団?」
「えぇ、そうです。もう察してはいるでしょうけど、名前さんが日本に行くのは本当のことですが、現地調査ではなくSPW財団の日本支部で保護してもらう事になりました」
「えっと……お世話になります。じゃあ、現地調査はどうするの?」
 紹介された人たちに挨拶と会釈をした後、私はジョルノに肝心なことを聞いてみる。
「イタリア料理店の出店は恐らく不可能なのは想定内です。SPW財団はスタンドのことも研究しているようなので、名前さんはそこで事務仕事をしてもらいます。あぁ、勿論働いた文はお給料は出ますよ」
「はぁ……」
 医療などで有名なSPW財団が、まさかスタンドの事も認知しているとは、思いもしなかった。やはりイタリア料理店ていうのは建前だったらしい。
「妊娠、出産、その後のサポート諸々は財団の人たちにお願いしてあるので、安心してください。……いつになってしまうかはわかりませんが、こっちが落ち着き次第です。こっちはこっちで早く二人が一緒になれるように、迅速に行動します。だから……名前も頑張って」
「話を聞いたときは、とても驚いたよ。ミスタが父親……想像できなくて困るけど、まぁ彼なら大丈夫でしょうし貴女がいない間にしでかさないか見張っていますよ。名前、また会える日を楽しみにしてる。身体に気をつけて」
「ジョルノ……フーゴ」
 最近涙もろくなったのは、妊娠からの情緒不安定になっているせいか?ウルウルと涙腺が緩くなっていたが、必死に堪えて私は深々と頭を下げた。
 財団に頼むにしても、色々と組織から交渉をしたのだろう。いくら仲間からのボスだったとはいえ、何から何まで迷惑をかけっぱなしだ。
「さぁ、そろそろ時間です。残念がらブチャラティ達は見送りができないので、ボクとフーゴだけになってしまいますが……定期的に連絡しますね」
「ううん。見送ってくれるだけ、嬉しいよ。ミスタをお願いね……」
 二人に手を振って、財団が用意してくれた飛行機に乗り込もうと背を向けた時。よく聞き覚えのある声に引き止められた。
「ちょっと、ミスタ。君の分の仕事は?」
「そんなもん、サクッと終わらせたぜ……ちょっとだけ待ってくれよ名前!」
「ミスタ……」
 任務に行っていたはずの愛しい人の姿に、私は心臓がきゅっと締め付けられた気がした。グングンと近寄ってくる彼に、私はなんて声をかけようかと立ちすくむ。手首を掴まれ、開かされた手の平にチャリっと小さな音を立てて冷たいものを置かれた。
「しっかり帰って来れるお守りだ。頑張ってこいよ! オレは……ずっと待ってるからよ」
 寂しそうな笑顔だったが、その声はとても優しかった。ポロッと我慢できずに一粒涙を零してしまうと、ミスタは頬に軽くキスをしてきて照れくさそうにジョルノの元に戻っていった。
「行ってくるね、みんな……」
 震えながらも最後までしっかり言い切って、私は待たせてしまっている飛行機の中に乗り込んだのだった。

 
 ――日本に来てから約一年半。
 寂しい時、悲しい時、恋しくなった時。そして心挫けそうになった時にひたすら眺めた写真は、端っこがボロボロで硬かった用紙はクタクタになっていた。
 この約一年半という期間は、光のように早く感じた。小さな黒い影だった存在は、五体満足に産まれてきてくれて日々スクスクと成長している。初めての育児に心が死にかけたけど、財団の人々や通りすがりの見ず知らずの人に助けられたりと、なんとか荒波を漕ぎ着けた。
 すっかり目が見えるようになり、ミスタからもらったお守りを目の前でチラチラと翳すと、しっかり目で追う姿は愛おしい。まだまだ寝不足が続く中、子供と一緒にウトウトしているとジョルノからの連絡を知らせる音が耳に入る。
 そのメールを見ると、書かれた文章に私の眠気は吹き飛んだ。


 メールから数日後、私は久々にジョルノに再開した。ジョルノの留守はフーゴがしているらしく、残念ながら彼一人だけ。ベビーカーに乗せた我が子を優しげな視線を送る彼は、しばらく見ないうちにだいぶ大人っぽくなっていた。
「なるほど、鼻のあたりはミスタっぽくて目は名前に似ていますね」
 初めて見る綺麗な顔に、我が子はキョトンしながらジョルノを見つめている。ジョルノはしばらく子供の顔を見ていると、何かを思い出したかのように短くアッと声を出した。
「そうそう、今日はボクだけじゃあないんです。……ちょっと」
 そう言うと、ジョルノは飛行機の傍で待機していた人に合図を送った。閉じられた扉が開かれると、中から出てきたのは……。
「ミスタ……」
 何故かアイマスクをしたミスタが出てきたのだ。その姿は"会いたかった!"と、走り寄る行動をためらうほど、不思議なものだった。すると、待機していた人はミスタの肩を叩いている。どうやら、アイマスクを外せと言われているようだ。
――目があった。時が止まってしまったかと感じてしまうほど、お互いに目を離せずにいた。
 どのくらいの時間が掛かったなんてわからない。私の色んな感情が限界に達した時、ミスタに一直線に走り寄って飛びついた。
 大泣きして鼻水と涙でセーターをグシャグシャにしても、あまりに強い力で抱きしめたせいでミスタが落ちかけても、慌てて周りが剥がそうとしても、私は暫く離れることはできなかったのだった。


 これまでの経緯をジョルノがミスタに丁寧に説明をしてくれていなかったら、きっととんでもなくややこしくなっていただろう。
 いや、それでもいきなり自分の子供が生まれていましただなんて言われたら、誰もが驚愕してしまうだろう。そこは避けては通れない道ではあったが、最終的にミスタは納得してくれたようだ。全ての話を聞き終わった時の第一声は、私に対する謝罪であった。
 時期が時期だけの妊娠であったから、私一人に背負わせてしまった事を気がかりにしていた。大人の事情など知らぬ子供は、いつの間にか気持ちよさそうに眠っていて、ミスタはそんな子供を見ながら"オレが父親か……"とどこか感傷深く呟いた。
「名前」
「んっ、何?」
 ミスタは私を呼ぶと、ゴソゴソと胸元から何かを取り出した。取り出したそれは輪っかが付いたネックレスのようだった。
「順番が逆だけどよ……これ」
 差し出されたのは指輪だった。ネックレスについていたのは、どうやら指輪だったらしい。
「剥き出しで悪いなぁ。本当は袋とかケースがあったんだけどよぉ……。再会した時にすぐに渡したかったから、かさばらないように持ち歩いていたんだよ……」
「…………」
「順番が逆になっちまったけど。名前、オレと結婚してくれないか? お前と……オレ達の子供をずっと守らせてくれ。幸せにするからよ」
 ずっとされたかったプロポーズ。ギャングに入ってから、そんな幸せな言葉を永遠に聞くことはできないだろうと思っていた。一度止まったはずの涙は再び湧き出て、ひたすら頷く私に、傍でずっと見守っていたジョルノはまた呆れていたけど笑っていた。
 "泣く泣くな、泣くな"とあやしてくれるミスタを余所に、ジョルノは静かに席を離れた。
「ボクです。――えぇ、近い日程で結婚式の手配をお願いします」
 ジョルノが通話を終わらせると同時に、まるでこれからの二人を祝福してくれるかのように、優しく温かい風が頬を撫でた。



 
あとがき

 ほわほわ様の『ミスタの切甘夢、フーゴの脱退も無しで全員生存の新生パッショーネ。闘いの中で仲間から恋人となった年下夢主→死闘後しばらくして妊娠発覚。→新組織の慌ただしさや自分達の立場な現実を直視して1人で産むことを決め、
早速、新ボスのジョルノの元へ相談しに行くけど〜』というリクエストから書かせていただきました。今回は結構細かくお願いされた事もあって、スムーズに書けたんじゃないかと思います。
 また今回もネタの方で詳細的なのを載せますので、よろしければ見てください。ほわほわ様、リクエストありがとうございました。今回もお楽しみいただけたら光栄です。





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