俺様何様帝王様



結露した窓を指先で拭けば、目の前に広がる銀世界。暖かいコートに身を包んで、さあいざしゅっぱーつ!




「おい、何処に行くつもりだ」




…しようと思ったら、卿に襟を後ろから引っ張られた。痛い。首絞まる。思わず「グェッ」と(判ってるよ!色気がないとか言うんでしょ!)声を漏らして、溜息混じりに軽く卿を睨みつけた。




「もう!聞いてたでしょ?今から死喰い人さんたちと雪合戦するの!」




卿の部屋でぬくぬくしていた私のもとに、任務で帰ってきたレギュラスが報告ついでに誘ってくれた。今日は死喰い人さんたちで雪合戦をすると!あの根暗引きこもり集団がフードを被ったまま雪合戦とかまじウケる…じゃなくて!丁度最近食べ過ぎでお腹周りが危なくなってきたし、良い運動だと思って即OKしたんだけど。




「私は良いなんて言ってないぞ」

「…いや、なんで雪合戦ごときで卿の許可とらなきゃいけないのよ」




自信満々に却下を出す卿に、これまた自信満々に突っ込んだ。不満そうに私を見詰める卿。…いや、何が不満なのか意味わかんない。




「何故わざわざ雪の降り積もる極寒の外界になど行こうとするのだ。此処で暖まっていれば良いだろう。風邪でも引きにいくのか。お前は阿呆か。」

雪降ってなきゃ雪合戦になんないでしょーが。阿呆はどっちだ!」




まくし立てるように阿呆だ馬鹿だと連発する卿に憤慨する私。…もう、何なのよ!キッと上目遣いで睨みつければ、複雑な表情で溜息を吐く卿。




「…サラ、お前、そんなに死喰い人たちと外で遊びたいのか」

「うん!(って言うか、雪合戦がしたいんだけど)」

「うむ…、なら、今日から雪合戦は禁止にしよう」

「……はぁぁあ!?」

「破った者はクルーシオだな」

「ちょ…何でそうなるの!?意味わかんないし!」

「これでお前も外に出ようなんて馬鹿な考えをしなくなるだろう?」




勝ち誇ったように口角を上げる卿に、私は最早溜息すら出なかった。




****




「…というわけで、雪合戦やるなって」

「そうですか」




仕方なくレギュラスにそう伝えると、彼は表情一つ変えずに頷いた。…大人だ。私なんて逆ギレ寸前だったのに。




「じゃあ代わりに、今夜チェス大会なんてどうですか?」

「わー良いね!勿論や…「ほう…サラ。夜中にどんな楽しいことをするつもりだ?」……るわけないじゃーん。夜更かしはお肌に悪いしね。ごめんねレギュラス」

「そうですか。じゃあ…残念ですけど僕はこれで」




そう言ってスタスタと歩き去るレギュラスの背中を、私は名残惜しげに見詰めた。あああああチェス…!そんな私を一瞥して、青白い唇から零れる溜息。




「…しょうがない。チェスも禁止にするか?」

「だから何でそうなるの!?っていうか、そんな横暴許されるわけないでしょ!」




ブチンと音を立てて逆ギレする私に、何故か高笑いする卿。




「阿呆が。私の発言は絶対。私がルールだ。そうだろう?」




勝ち誇ったように微笑む卿。この…独裁者が!私が無言で睨みつけると、少し冷静さを取り戻したのか、後頭部を掻いて舌打ちをした。




「…とにかく。お前はもう寝ろ」




そう言って頭を撫でる卿の態度は、完全に私を子ども扱いしてる。


死喰い人の子どもだった私は、両親が死んでから卿や他の死喰い人さんたちに小さい頃から育てて貰ってた。だから卿にとっては私は子どもだって判ってはいるんだけど…さ。それでも私だってもう立派にお年頃の18歳なわけで。子ども扱いなんてしてほしくない。雪合戦したいチェスしたいー!




「いつまでも子ども扱いしないでよ!」




最後の抵抗とばかりにむ、と頬を膨らませると、卿は驚いたように少し、目を見開いた。




「…阿呆。もう子どもじゃないから心配なんだろうが。」




そう言って。ゆっくりと奪われたのは、今まで大切に大切に守ってきたファーストキス。私は珍しく反抗出来なくて、そのまま馬鹿みたいに固まっていた。






俺様何様帝王様



「あと、"卿"って言うのもやめろ。萎える。」

「(萎えるって…)じゃあ、何て呼べば良いの?」

「ヴォルデモート」

「長い」

「ヴォル」

「……!!(この人今自分のこと"ヴォル"って言ったよ…!!)」

「…何だその目は」

「いや…何でもないデス。…ヴォル、」

「…!!」



なんて。私が小さく「ヴォル」と呼んだだけで血色が良くなった彼は、結構可愛い性格してるかも。
(それでもやっぱり俺様独裁者だけどね)



(ヴォル顔赤いよ?)(五月蝿い)





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