「せ、先輩…?」
「黙って」
「っ!!」

誰もいない放課後の教室で何故か私は沖田先輩に壁に押し付けられていた。
顔に息がかかる距離に沖田先輩の綺麗な顔があって、咄嗟に何処に視線をやればいいのか困ってしまう。
沖田先輩の無茶苦茶な発言や突飛な行動に振り回されることにも最近では慣れてきたけれど、こんなことは初めてでどうすれば良いのか分からない。

動くことも出来ない数分が数時間に感じられる沈黙。その沈黙を破ったのは沖田先輩だった。
腕を掴む手の力が不意に強くなる。

「い、たいです」
「痛いならもっと抵抗してみたら」
「そりゃ、抵抗はしますけど!!」

何でだろう、今日の先輩は凄くピリピリしている感じがする。
その証拠にいつも以上に手加減なしで手に力を込めている。

「ちょっと沖田先輩本当に痛いですって。どうしちゃったんですか!?」

確かに先輩は私を苛めて楽しんでるけれど、身体に痛みを与えるようなことは今までなかったのに。

「君を見てるとさぁ」


何が起こったのか理解出来ない。

先輩との距離がゼロになって唇に冷たいものがあたる感触がして、気付いた時には沖田先輩の視線とかち合った。

「君を見てると何かむかつくんだよ」

「え…?」

私、いま先輩と…?
しかしあれこれ考える前に、沖田先輩の口から告げられた言葉が深く胸に突き刺さる。
嫌われてようが構わない筈なのに、どうしてこんなに苦しいの。

居た堪れなくてそれまでずっと掴まれたままの腕を振り払い沖田先輩を突き飛ばしてしいた。そして、余裕もなかった私は沖田先輩の表情も見れずそのまま教室を飛び出した。

沖田先輩もまた苦しそうな表情をしていたことなんて気が付かなかった。


泣き喚きながら喜んでくれると思ったのに

(悪戯心の筈なのに)(何故か胸が痛む…)

(101228~110213)




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