「ど、どうして沖田先輩が…!?」
私の叫びも虚しく周囲は視線を逸らし完全に無視を決め込んでいる。
沖田先輩と最悪な出会いを果たしてから数日、特に何もない平穏無事な日々を過ごし、沖田先輩のことは記憶の片隅に追いやっていた矢先の出来事。
朝、登校して教室に入ったら私の席に沖田先輩が座っていました。
遅刻常連の沖田先輩がこんな時間にいること、そして私の席を占拠していること。
なんでとこうなったとしか言いようがない!!
沖田先輩は私の存在に気付きながらも無視しながら何かを熱心に読んでるし、平助や千鶴ちゃんはまだ登校してきていない。クラスメイトは関わりたくないオーラを醸し出しているから頼れないし、恐らく私が来る前に沖田先輩が何かしらの圧力を掛けたに違いない。周りの引き具合が半端ないからどのみち期待はしていなかったけれど。
どうしよう、この状況打破できる気がしない。
でもずっと放置していたら沖田先輩は多分ずっと居座り続けるきがする。
それに周りからも助け舟の予感はないけれど、明らかに早くどうにかしろと視線で訴えている。
ここは自力でどうにかしないといけないの、か…。
「お、沖田先輩」
思い切って声をかけてみたが相変わらず沖田先輩の視線は手元の何やら分厚い本に向けられたまま。
「そこ私の席なんですけど…、どいてくれませんか」
「沖田先輩!!」
「煩いなぁ。いま拷問事典読んでるから邪魔しないで」
「ごっ…!?」
やっと応じてくれた、とおもったら苛々した沖田先輩に思いっきり睨まれた。そして聞き慣れない嫌な響きの単語が、聞こえた気がする。
私の引き攣った顔を見て先輩のS心に火が付いたのか怪しげな笑みを浮かべ如何にも危なそうな黒い革表紙の本を差し出してくる。
「これ面白いよ、どこをどうすれば人間をぎりぎりまで追いつめられるかすごい勉強になるんだ」
「え…」
「ねぇちょっと試してみたくない?」
「や、結構です!!」
「遠慮しないでよ、君の為に今朝は頑張って早く来たんだから」
「いいですいいです、というか毎日この時間に頑張って来てくださいよ。斎藤先輩も喜びますよ」
「…なんかそれは嫌だな」
「へっ?」
「ほら軽く関節外しからにしてあげるからこっちおいで」
「ええええええ!!」
私に沖田先輩はとてもじゃないけど扱えきれません。
ちなみにHR始まっても教室に居続けた沖田先輩は一限目の古典の土方先生によって自教室に強制連行されました。
(その間主に私の机を中心に惨劇が繰り広げられたのは言うまでもない)
(101128~101228)