斎藤さんが非常に挙動不審だ。


「どうなされたんですか?」
「あ、…いや別に…」
「何かあったら遠慮なく言ってくださいね」
「ああ、すまない」


非番でする事がなく暇なのか朝から屯所内をうろうろしている姿が見られる。
それだけなら特に問題はない。けれど何だかずっと視線を感じるというか…、最初は気のせいだと思っていたけれどそれにしては私が行くところにやたら付いてきている、と思う。そして何か言いたげな顔をして見つめられてる、気がする。

何なんだろう、すごく気まずい。仕事し辛いです斎藤さん。




自分でも挙動不審な動きをしているのは理解している。

今日は折角の非番、最近忙しくてなかなか接する機会の無かった名前に構いたい。が、名前は仕事があるから忙しそうに屯所内をずっと動き回っていて話掛ける機会を伺うもののなかなか名前の暇が見付からない。それどころか無意識の内に付き纏ってしまい名前には不審に思われたに違いない。
ついには名前に心配されて逆に話掛けられてしまったが心の準備が出来ておらず動揺してしまった。

そもそも何と言って話を切り出せば良いものか…。


「あ…、名前」
「斎藤さん」

仕事も一段落ついたので夕飯の献立を考えながら外へ出ようとすると後ろから斎藤に声を掛けられた。

「今から買い出しか?」
「はい。あ、何か必要なものがあれば買ってきますよ」
「そうではないのだが」

今日何度も目撃した何か言いたげな顔をむけられ、斎藤さんの謎の緊張感が伝わってきて動けなくなった。

言いにくいことなのかな?


名前が不安に思っているのと同じ頃に斎藤は悩んでいた。

今しかないと思って声を掛けたが名前に見つめられると緊張しやたら心音が煩く聞こえる。

ただ一言、言えばいいだけだ…!!


覚悟を決めて名前の方に一歩近寄る。


「斎藤さん?」
「その…一緒に行ってもいいか?」
「え」
「あ、いや別に邪魔をするつもりはない」
「いえ邪魔とか、寧ろ一緒に行ってもらえるなんて」
重々しい内容を想像していたため名前から安堵の笑みが零れた。


「良かったー、斎藤さんずっと難しい顔をしていたから」
「す、すまない。怯えさせるつもりはなかったのだが」

やはり自分が彼女に迷惑を掛けていたのだと斎藤は申し訳なさそうにやや俯いてしまった。

「大丈夫ですよ、確かに少し怖かったけど何か良くない事があったんじゃないか、って思ってたから安心しました」

そっと斎藤の手を名前が握り締めると斎藤は弾かれたように顔を上げた。
名前は逃がさない、と手に力を籠める。

「一緒に行ってくれませんか、お買い物。ついでに献立を考えてくれると嬉しいです」

「あぁ、俺で良ければ宜しく頼む」


少しだけ淡くできてるみたい
(不器用なだけだから)(ゆっくり手を引いてあげる)

title:花洩




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