「そんでな聞いてや名前ちゃん」
「う、うん」
「謙也くんが案の定躓いてそこへすかさず財前がお得意のキビシー突っ込みを入れたんよ」
「は、はぁ…」
「もうあの冷たい視線がたまらんわー」
「えっとー」
「でもへたれな謙也くんも可愛いんよねぇ」
「こ、小春ちゃん?」
「どないしたん?」
「あれ…」


先程からびしびしと突き刺さる痛い視線を何とか無視してきたけれどあまりの気迫にさすがに堪え切れなくなってきた。

あれ、ことユウジが今にも飛び掛からんとする勢いで此方を見ている、正確には小春ちゃんにはラブラブ熱視線、私には敵意の籠もった視線だが。


「さっきからこっち見とるよ?」
「あぁーほっとき。ユウくんおったら絶対邪魔してくるからガールズトーク出来んやろ」
「いや…うん、そうやけど…。小春ちゃんユウジにめっちゃ愛されてるやん」
「一氏に愛されててもな…」
「小春ちゃん!?」


ぼそりと真顔で吐いた台詞に背筋が寒くなった。
何だか知らない方が良かったものを知ってしまった気がしますよ。

名前が若干青褪めた顔をしているのに気が付くとすぐさまいつも通りの笑顔を取り繕う。

「いやーんそんなこと言って。名前ちゃんの方が愛されてるやろ、千歳とか蔵リンとか」
「ちぃになら嬉しいけど蔵に愛されてもなぁ…」
「あららー、やっぱりお兄さんより彼氏の方が嬉しいものかしら」
「そもそも抱く愛情の種類が違うやんか」
「でも大切に想われてるっていう点では嬉しいじゃない」
「それは嬉しいよ。でもねー蔵はいつもベタベタやけどちぃは結構気まぐれやから、たまに愛されてるのか不安になっちゃうんよねぇ」
「あらそうなの?千歳は十分名前ちゃんのこと愛してると思うわよ」
「ええ!?そんなことないよ。やってふらっと放浪するのはいつものことだけど、長期間連絡も寄越さんし連絡取れんしっていうのはどうかなー、と思う」
「いつも連絡くれてるんじゃないの?」
「全くやねん、そもそも普段でも携帯に連絡つかんことの方が多いし」
「千歳らしい気はするけど…女の子としては嫌よねぇ。連絡せんでも名前ちゃんなら分かってるみたいに思ってるんかしら。離れてても繋がってるみたいな」
「なんかそういうのあんま嬉しくないかも」
「繋がってるのは蔵リンやし」
「それも微妙です。そういうんじゃなくてー、やっぱり何も言わんでも通じてるとかより言葉で通じ合いたいやん。というかちゃんと言葉が欲しい」
「分かるわ!!言葉で伝えて、態度で示して。それからじゃないと信頼もなにもあったもんちゃうもの」
「まさしくその通り。ちぃも蔵くらいに来てくれたら嬉しいんやけど、まぁされたらされたで恥ずってなるかも」
「照れんでもええやんかー、もう名前ちゃんてば」
「やって普段あんませんことされたら嬉しいの半分恥ずかしさもあるし」
「これは千歳に一回ちゃんと言い聞かせて実行してもらわなあかんようになってきたわ」
「小春ちゃん!!」
「はいはい、って」
「どうしたん?」
「あれ見てみ」


小春の指差す方を見れば先程からいるユウジといつの間にか加わった千歳が何か熱心に話し込んでいるのが見える。というかユウジが一方的に泣きついているような。表情をコロコロ変えて実に忙しい男だ、と二人はその様子を眺める。


「珍しい組み合わせかも」
「あ、ユウくんてば千歳に抱き着いてるわよ」
「私のちぃに勝手に抱き着くなんて!!…許さん」
「名前ちゃんてば、可愛いわぁ」

愛され二人組

(小春ぅぅぅ!!)(ユウジ落ち着け!!)




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