「お菓子屋さん開けるやん」
テーブルの上に山のように積み上げられた色とりどりの包みと向かいに座る苦笑いの白石の顔を交互に見て名前は感心の声を上げた。

毎度の事ながら凄い量。どんだけモテるねん、言っとくけど良いんは外面だけ出会って内面までは保障出来んよ。やって、エクスタシーとか言っちゃってるもん。

「好きなんやるわ」
「うん、でもこんなようけ食べきれんで」
「近所にお裾分けしよか」
「なんかめっちゃ厭味っぽい」

バレンタインチョコを配るとかどうやねん。世の中のモテない男性諸君に対する嫌がらせか。それでも喜ぶ人は喜ぶかもしれんけど(オサムちゃんみたいな独身男性とかね)

「にしても毎日一個ずつとかじゃ絶対減らんで」
「一日ノルマ五個やな」
「うわーちょっと間チョコ続きかぁ…」
「ええやん、おやつ代かからんで済むやろ」

全部包装されているけれどなんだか甘ったるい匂いがするような。山積みになっているから甘い匂いが充満しているような、ふとそんな気分になってしまった。あれ、なんか急に食べる気萎えた。てかこんだけ食べたら太るやん、血糖値むっちゃ高くなりそう。

「なー、くらー」
「なに?」
「なんか食べたくなくなってきた。こんな食べたら身体中糖分まみれやん」
「甘いもん食って死ねるんなら本望やわ、とか言ってたやん」
「やってまだ死にたくないですもん」
「俺も死にたないわ」
「蔵が貰ってきたんやから頑張って食べたりよ」
「ホンマ酷いわ。俺を見殺しにするんやな。お兄ちゃん泣いてまうわ」

わざとらしく溜め息をついて白石は山積みされた包装の一つを引っ張りだして開け始めた。

「あーあ、こんな美味しそうなやつお裾分けしたろ言っとんのに。残念やわ」
「私は気分的にチョコレートよりプリンなんで、す……?」

目の前で開封されているそれを見て名前の動きが止まった。

「そ、それ」
「ん?あぁ、駅前の新しく出来たとこのやつちゃうか」

箱にはこの間駅前に出来た高級洋菓子店の名前が書かれていた。チョコレート一粒数百円とかいう、一般庶民にはなかなか縁遠い物だ。それが目の前にあるなんて。

「そ、それむっちゃ高いやつやん。誰から貰ったんよ」

中学生が買うには苦しい値段の筈。

「校門出たとこで知らんお姉さんがくれたわ」

名前は驚いて白石の顔を凝視した。
兄妹ながら恐すぎる。こいつ、歳上のお姉様からも貢がれとんかよ!!

「なんか、蔵と双子っていう事実を否定したいわ」
「何言ってんねん、事実は事実やろ。それよりさぁ」
「な、何?」
「これ欲しくないか?」

そう言って目の前に差し出された高級洋菓子店のチョコレート。

「これむっちゃ美味しいねんけど、俺にはちょっと甘過ぎるねん」
「へ、ぇぇー」

思いっきり胡散臭い笑顔で迫ってくる。確実に何かを企んでる顔やん。

「これやるから一緒に食べるん手伝って」
「うっ……」

正直一緒に食べても良かったんやけど(高級チョコレートくれるんやし)それでも一度は食べない、って言ったのに直ぐに意見を変えるのはプライドが邪魔して許せなかった。

「で、でも!!私はプリン食べるって決めたから」
「そうかー、残念やわ。貰った中にチョコプリンもあったのに」

うわー確信犯。そんな手に乗るわけないやん。プリンくらい何時だって食べれるもん、食べれる、食べ、れ………。




「うわーい、お兄ちゃんだいすきー」
(扱い易いわ)


食欲には勝てませんでした。



メルト協奏曲


「これむっちゃ美味しいわ」
「(きゅん!!)余るほどあるからどんどん食べや」
「蔵も食べよ」
「俺はお前で腹一杯やから」








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