「んー」

昨夜寒さに我慢出来ず毛布を引っ張り出したおかげか今朝は布団の中が温かくて起きるのが嫌になる。


「あっ、ちょ…」


どうせ今日は部活休みやしもうちょい寝とっても怒られんし。

二度寝しようと寝返りを打ったっときふと何かに当たった気がした。というか抱き込まれているような?

「いやこれはこれで」


違和感の正体を確認しようと目を開ければ視線がばちっと合ってしまう。

「おはよう今日も可愛いなぁ、というか朝からめっちゃ大胆でお兄ちゃんはドキドキやわ」

やたら布団が温かかったのは爽やかスマイルを振り撒き平然とベッドに潜り込んでいたのはこの阿呆のせいだった。双子の兄である蔵ノ介の奇行は今に始まったことじゃない。まぁ朝起きて一緒に寝てたっていうのは久々だったから少し驚いたけどこういう時の対処法はちゃんと心得ている。

有無を言わさずどついておく。

もはや本能的に右手を振りかぶろうとすれば更なる違和感を感じ、恐る恐る右手に目をやった。


「なんで包帯…?」

しかも何故か蔵ノ介の左手とがっちりくっ付いたまま包帯をぐるぐると巻き付けられており私が右手を上げようとすれば蔵の左手も一緒に付いてくる。

「お揃いやで」

ぽっと頬を赤らめる兄の姿に頭の中で線が数本ぷっちんとなったのは言うまでもない。
不自由な右手ではなく左手で綺麗な面を引っ叩いてやった。

「な、何や急に!!」
「そっちが何のつもりやねん!!」
「いやその包帯さらっぴのやつやから汚ないで」
「そんなんでキレとるんちゃうわ、何勝手に人の布団潜り込んで挙句こんな悪質な嫌がらせされなあかんの」
「え、だって今日はあれやん」

私が何故怒っているのか分からないといった風に蔵は首を傾げる。

「あれ?」
「そうそうトリックオアトリートって」
「ハロウィンやっけ」
「そうやでー。やから悪戯☆」


蟻とマカロン

「悪戯って…。そういうのは普通お菓子持ってるか聞いてからやろ」
「やってお菓子持ってへんやろ?」
「まぁそうやけど…」
「それにこれってハロウィンの仮装にもなるやん、ミイラ人間ってことで」
「なるか!!」

相変わらず何を考えているのかよく分からん。君の左手は毒手設定じゃなかったんかい、ってあ、もしかしてこれをしたいが為に部活休みなんかもという疑問が浮上した。
聞いてみれば笑顔で即答イエス。その瞬間堅結びしてあった包帯を無理やり鋏でちょん切って自由になった右手で蔵の襟首を掴み部屋の外へ追い出した。その間実に数十秒という早業、自分でもびっくりの手際の良さだったと思う。



「疲れた…」

全く…朝からやらかしいてくれたおかげで頭が痛くなった。
もう一眠りしよう、そして次起きた時に今度は蔵に悪戯を仕掛けに行こう。
仕返し、どんなのがええかな。


101031




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