今日は風紀検査の日、ということで当番の風紀委員は早朝から校門に立ってチェックを行わなければならない。
斎藤先輩と一緒に取り締まること数十分、もうチャイム直ぐ鳴ってしまうのでこれから登校してくれば遅刻になってしまうので、急いで走ってくる生徒が多い。この人達をチェックし終われば仕事も終了だ。


「今日はそろそろ終わりだな」
「はい、あのリストは」
「あとで土方先生のところへ提出しておいてくれ」
「分かりました」
「ご苦労だった、……ちょっと待ってくれ」

漸く一息吐ける、と思った時不意に斎藤先輩の表情が険しくなった。
その視線を辿っていけば何となく原因は分かってしまった。


「総司、急がないとチャイムが…。鳴ったぞ」
「あー、鳴っちゃったね」
「残念だが減点だ」
「えぇちょっとだけじゃん。ほんの数秒だよ」
「数秒でも遅刻は遅刻だ。チェックを付けといてくれ」
「は、はい」


学校でも有名な沖田先輩と斎藤先輩が並ぶとオーラが凄い。
すっかり蚊帳の外で傍観していたので斎藤先輩に声を掛けられ驚いてしまった。
急いでリストに記入すれば、目に留まるものがあった。


「あの、だいぶ遅刻がついてますけど」
「そういえば今回で5回だったな」
「今回のを見逃してくれたら嬉しいんだけど」
「それは駄目だ、後で生徒指導室まで来てもらおう」
「えーまた土方さんに怒られるの?」
「当然だ」


この学校の規則で遅刻5回で生徒指導室への呼び出しがある。そこでは生徒指導の土方先生による恐怖のお説教が待ち受けている為、一般の生徒は呼び出しを食らわないように遅刻しない努力をしているのだけど。

「先週も行ったし、今更話すことないよね」
「お前が生活態度を改善するまではいくらでも話はある」
「まあまともに土方さんのとこに行くわけないからどうでもいいんだけどさ」
「総司!!」
「はいはい、それよりいつまでもこんなことしてちゃ駄目でしょ?一君がここにいる限りその子も教室戻れないよ」

沖田先輩の言葉にはっとして斎藤先輩は申し訳なさそうに謝った。

「気が付かなくてすまなかった」
「いえ、大丈夫ですから」
「もう俺も教室に戻るからお前も教室へ戻るといい」
「はい、お疲れ様でした」


漸くその場から解放されてほっとした。斎藤先輩とは委員会で何度も会っているから慣れているけれど沖田先輩とは喋ったこともないし、何より学校の人気者である彼に私みたいなのが近寄るなんて畏れ多すぎる。巻き込まれないうちにさっさと土方先生のところへリストを持って行って教室に戻ってしまいたい。

先輩に一礼すると足早に立ち去った、
と思いきや腕を掴まれ思わずつんのめってしまった。


「大丈夫?」
「うっ、はい何とか」

背後から聞こえる声に思わず嫌な予感がして振り向くのが躊躇われたが腕を掴まれている以上振り向かざるを得ないようだ。

やはり、というべきかそこには満面の笑みを浮かべた沖田先輩が立っている。


「あの何でしょうか?」
「君さ、遅刻取り消してくれないかな?」
「それは…」
「土方さんにどう思われようが構わないんだけど、近藤さんに知られるのは嫌なんだよ」
「しかしそれは」

風紀委員として遅刻を見逃すのは不味いと思う。でもこの状況すんなり打開出来るとも思えない。
困り果てていると後ろから来た斎藤先輩が腕を振りほどいてくれた。


「総司、そのように後輩を怖がらせるな。お前も総司に構うことはない、早く土方先生のところへ行って来い」
「ありがとうございます」

沖田先輩には悪いけどこれが私の仕事だから。自身に言い聞かせて今度こそ立ち去ろうとすれば、場が凍りつく一言が沖田先輩の口から飛び出して来た。


「ふーん、君も土方さんに従ってるの?」
「別に従ってるってわけでは」
「あはは!!そんなむきにならないでよ、冗談に決まってるでしょ。犬は一君だもんね」
「貴様は喧嘩を売っているのか?」
「まさかー。それより君って結構可愛いね。
今度からブタ野郎って呼んでいい?


一瞬意味が理解出来なくてぽかんと口を開けたまま沖田先輩を凝視してしまった。
先に復活した斎藤先輩は沖田先輩を窘めて、私を必死に慰めようとしてくれていたけど。

別にショックを受けたとかではなく、ただ尋常じゃない量の汗が流れて本能的にやばいのだと感じ取った。

私、沖田先輩に目を付けられてしまったようです。
(なんで!!!!)


(100925~101027)





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