「おい」
「…」
「おいと言っている」
「…」
「俺を無視するとはいい度胸だな」
「…ごめんなさい」
風間はこの上なく苛ついていた。舌打ちをすれば名前が肩をびくりと震わせたのが見え更に苛々させられる。
このところ薩摩の連中が煩くなかなか家に帰ることも出来なかった為、漸く名前に思う存分触れられると思っていたらこの態度。まさかこの俺を拒むとはいい度胸だ。
いつまでも布団に入ろうとせず部屋の隅で小さくなっている、それどころか一度も此方を見ようとしない名前に風間の短すぎる堪忍袋の緒が切れた。大股で名前の元へ歩み寄ると力任せに肩を引き寄せ顎を掴むと無理矢理視線を合わせた。名前の瞳が不安げに揺れる。
「何故俺を避ける」
「っ…」
「言えないとは、何かやましいことでもあるのか?」
「ち、違います!!」
「ならばどうしてか言えるだろう」
「それは…」
歯切れの悪さに苛立ちから手に力が篭ってしまい名前が顔を歪めるが、今の風間にしてみればその様子は寧ろ加虐心を煽るだけであった。徐に襟首を掴んで畳に押し倒すと名前の上に乗り上げて首筋に噛み付いた。
「あぅっ!!」
「早く言わんと更に痛いことをするぞ」
「や、めて」
「ならさっさと言え」
「あの……千景様は、私では満足出来ていない…と」
「は?」
満足、とはどういう意味か。風間が思わず首を傾げればとんでもない言葉が飛び出して来た。
「千景様は、その…つるぺたな少女が好みだとお聞きしました」
「それは一体誰から聞いた」
「新選組の沖田さんが」
思わず頭が痛くなった。名前が新選組の連中と接触していたことにも腹が立つがそれ以上にでまかせを吹き込んだ男に対する怒りが大きい。次に出会った時には絶対に嬲り殺してやると風間は心に誓った。
「私は少女なんて言える歳でもないし、それに」
名前の視線が下がり釣られてその先に有るものを見てしまう。それは少女の未熟なものとは正反対のいかにも魅力的な大人の女性を感じさせる大抵の人なら憧れそうな大きさであったりする。そしてそれは風間が長年じっくり育ててきたものであって嫌なものではない、というか理想どおりにいって満足している。
風間からすればとても馬鹿らしいことだが名前にしてみれば重要な問題である。
「年齢はどうしようもないですけど胸ならばなんとかすれば小さくなるかと。そうすれば千景様の期待に少しは沿うことが出来ると思うんです。だから」
「名前…」
嫌われまいと必死な様子に思わず溜息が零れる。名前の大きな瞳から耐えきれずに涙が一筋零れ落ちる。
「ごめんなさい、私今まで全然気が付かなくて」
「…誰がお前を嫌うものか」
篭めていた力を抜いてそっと涙を拭ってやると無防備な唇に貪り付く。
「んっ、ぁ!!」
そのまま舌を絡め捕り、息が切れるまで口内を犯し続ける。お互いの唇を離した頃には名前の顔は真っ赤になっていた。
「俺が好きでもない女とこのようなことをすると思うか?お前は俺の妻だ、今のままで堂々としていれば良い」
「千景様…」
「歳や身体うんぬんではない。名前だから十分満足しているのだからな」
また泣き出しそうな名前に今度は優しく口付けてやれば久しぶりに恋い焦がれた笑顔が表れ、心臓が音を立てた。
「お前のことをどれ程想っているのか序でに教えておいてやろう」


膨張して融解

(因みに俺はまな板のような胸も少女も好みではない)(あれ、でも?)(出鱈目にきまっているだろうが)


title;花洩




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -