「なんでびしょ濡れなん?」
「まぁ、大雨やから?」
「そんなん知っとるわ、やから傘は?」
「来る途中で壊れた」


四時間目の終わりにふらっと登校してきたちいはまるで頭から水を被ったみたいにびしょ濡れだった。あ、こういうのが水も滴るいい男って言うんかな?まあ迷惑極まりないけど、教室に水溜まり作ってるし。


「ちょ、早く拭きよ。むっちゃ滴れとるで」
「あータオル貸して?既にびちゃびちゃになっとるけん使い物にならんとよ」
「はいはい」
「ん、ありがと名前の匂いがするー」
「なんか変態っぽい」
「名前ー」
「冷たっ!くっつかんでよ私まで濡れるやん」
「ちょっと透けとる」
「ぎゃああ!!」


ぐりぐりと頭を押し付けてくるちいを急いで引き剥がそうとするけどなかなか離れてくれなかったので濡れてぺったんこになってる髪を引っ張ったら、涙目になりながら漸く離してくれた。


「名前酷いっちゃ」
「当たり前やん。教室やし皆見とるから」
「やだ離れたくないー」
「そんな風に言っても可愛くないですー」


小さな子供みたいに頬っぺたを膨らましていじけるちいが本当は物凄く可愛く見えたけどここで甘やかしたらあかん、調子に乗りますから。


「で、その制服をどうするかやな」
「部室にジャージ置いとるたい」
「良かったやん、着替えてきたら」
「あー…、でも俺はよか。名前が着ると」
「私は別に…」


胸元に向けられている視線で自分も巻き添えくらって濡れていたのを思い出した。


「名前のエロい格好をじろじろ見られるんは嫌」
「アンタがやったんやろ」
「そうですけどー、な?頼むったい」
「私よりちいの方が濡れとるから風邪引きそうやん。私は蔵か謙也のジャージ借りとくから」
「それは無理!!」


態度がさっきと一変した千里に肩を激しく揺さ振られた。なんなのこの人、いつもとキャラ違うよ。


「名前は俺のジャージを着ればよかよ」
「じゃあちいはどうすんの?」
「誰かのジャージ借りとく」
「体格的に無理やろ」
「やって名前が他の男のジャージ着るのは見たくなか」
「じゃあ蔵のんやったらええやろ」
「あかん白石も男たい」
「あんなぁ…」
「お願い!!」

そんな首をかしげてみても、潤んだ目で見つめても可愛くない、絶対に…!!



「ちいのジャージでかい」
「その身体に合ってない感がそそるたい」
「アホ!」


水も滴るってやつ

 




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