今日も千景は千鶴ちゃんを追い掛けに行っている。
どうせ相手にされず追い払われて帰ってくるのに懲りもせずにいつもいつも、どうしようもない馬鹿なのかはたまた本気で千鶴ちゃんのことが好きなのか。別にそんなのどっちでもいいんだけどね。
何がムカつくって、


「あああもう暇ー!!誰か構ってよー!!!」


千景が千鶴ちゃんに出会ってからあんまり遊んでくれなくなった。
千鶴ちゃんのことが好きなんだったらそれはそれでいい、千景に対して恋愛感情がある訳ではないから。向こうだって私のことを友達程度にしか思ってないし。
それなのにどうして一々千景に私の行動を制限されないといけないの?恋人を束縛したいっていうなら判らなくもないけどそんな関係じゃないし。なんか口煩いし、やることなすことケチつけるし。お前はオカンか!!勝手に出歩くなって意味が分からない。新選組に行くときだって天霧や不知火はよくてなんで私は着いていったらダメなのよ。私だって戦えるし、年頃なんだから家に引き籠ってばっかじゃなくて外に遊びに行きたいし、恋人だってほしい。




「というわけで来ちゃいました」
「また来たのか。悪いが今は取り込み中だ、あと風間を如何にかしてこい」
「ええー、千景なんか知らない。ほっといたらお腹すいて帰るよ」
「それではこちらが困るんだが」
「だって新選組に来てることばれたら怒られるよ」
「ならば来なければ…」
「私が来たら迷惑?」
「う…、くれぐれも煩くするなよ」
「了解です。ありがとう斎藤さん大好き!!」
「っ、くっ付くな!!」

この辺が千景との違いだよね、涙目とか鼻で笑われるだけだし仕事の邪魔したら絶対一発蹴り入れて追い払われるもん。それに比べて斉藤さんは優しいから好き。これは冗談じゃなくて結構本気だったりするんだけどなかなかまともに取り合ってもらえないから悲しい。でも挫けない、だってこの必死の努力が片思いの醍醐味なんだって千姫が言ってたもの。

まぁこんな感じで千景が留守の隙を見計らって何度か新選組に、というか斎藤さんのとこにお邪魔している。一応敵対の立場なのかもしれないけど私自身は特に薩摩藩と関わりもないし、新選組に危害を加えたり千鶴ちゃんを無理やり連れ去ろうなんてしないから何時の間にか彼の中で敵という認識から外れたらしい。


「で、今日も勝手に出てきたのか?」
「うん千景ったら本当に家から出してくれないの」
「風間なりに名前のことを大事に思っているのでは」
「過保護とかないない、何処の世界に大事にしてる人に喧嘩で三途の川見えるまで首絞めるやつがいるのよ」
「それは…、確かに喧嘩に女に手を挙げるのも考えものだな」
「でしょ、大体アイツ私のこと女と思ってない気がするんだよね」
「そうだろうか?」
「絶対にそう。だってお前には色気も女らしさの欠片もないな、って言われた」

確かに昔から落ち着きがなくて女の子らしく御淑やかにしなさいってよく言われたよ。でも最近じゃ料理、洗濯、掃除に裁縫、一通りの家事も頑張って熟してるって評判なんだから。それに色気に関しては悪いけど千鶴ちゃんより胸あると思う。

「ホント一回家出しちゃおうかな、というかいい加減千景から独立したい。ってことで良かったら嫁に貰ってくれませんか?」
「よ、よめ!!??」
「天霧には良い嫁になりますよ、ってお墨付きを貰っちゃったから安心してよ。精一杯尽くすし」
「冗談はやめてくれ」
「うう、冗談じゃなくて本気なんだけどなぁ。私ね本当に斎藤さんのことが好きなんだけど、やっぱり斎藤さんもこんな煩い女はいや?」
「いやその別に嫌とか、ではないが。急に言われても心の整理がつかないというか」

あれ駄目元で言ってみたんだけど意外に脈あり?
何よりいつも好きって言っても伝わらなかったのに何故か今回は伝わったぽいのが一番びっくり。それだけで結構満足なんですけど。


一人悦に入っていたらそれまで固まっていた斎藤さんが急に動きだした。と思ったらいきなり肩をがしっと掴まれた。しかも斎藤さんの顔が真剣すぎて振りほどくのも躊躇われる。

何分か空白があり意を決した彼の口から出たのは正直言いだしっぺの私からみても血迷ったのか、と思う様な言葉でした。


「名前」
「え、はい」
「その…、至らないところも多々あると思うが悲しませないよう心掛ける」
「ちょ、あれ斎藤さん?」


「だからその、もしよければ俺と結婚してくれ」



熱はありませんか?


「それこそ冗談ですか?」
「おれは軽々しくこんなこと口にしない」
「えええええええ!?」




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