「この世界の何処かにはさー、私の旦那さんがいるんだよ」
「は…?」


師匠の飲み散らかした部屋を片付けている際、ふと姉弟子がぼやいたのだがアレンにはその意図がイマイチ掴めずハテナマークを浮かべた。
遠い目をしているあたり現実逃避だろう。さっき師匠にデコピンされた時デコピンにあるまじき破壊音がしたしもしかしたらあれで頭がイッてしまったのかもしれない。


「私もいつかは結婚して幸せな家庭を築きたいわけ、ね。でさよっぽど年下の人と結婚ってことにならない限り私の未来の旦那さんは今この世界の何処かで生きてるんだよ」
「まあそうですね」
「それってすごくドキドキしない?今はお互いのこと知らないで何もなしで生活してる二人がいつか出会って結ばれるの」
「でも相手は誰か分からないでしょう?もしかしたら僕かもしれないし、師匠なんてこともなきにしもあらずですよ」


そう言うと彼女は顔を顰めた。そりゃそうだろう、師匠と結婚なんて一生下僕の地位をゲットしたのと同然だ。その光景が容易に目に浮かぶものだから恐ろしい。


「うーん、アレンなら全然良いけど師匠はないでしょ。イヤイヤないわ、天変地異が起きてもないって」
「人生どう転ぶか分からないですから」
「やだよー未来の嫁に虐待行為を繰り広げる旦那が何処にいるのよ。そんな家庭内暴力確定な人に嫁がないし」
「SMプレイの一環だと思えば良いじゃないですか」
「無理死ぬ」
「愚痴くらい聞いてあげます」
「ていうか私師匠と結婚する前提?何だったらアレンがすれば良いじゃん」
「僕男ですよ」
「女は飽きて男に走る可能性だってなきにしもあらず」
「うえー、止めて下さい。僕は女性と結婚したいです。僕だってこの世界の何処かで暮らしている未来のお嫁さんと仲良くしたいですから」
「そうだよね、やっぱ暴力は良くないからね」
「平和が一番です」


「ほう、それはどういう意味だ?」

「「し、師匠!!」」





冷静に考えたら
答えはそこに



「最悪の場合は僕たちが結婚すれば済むじゃないですか」
「アレンがこのまま成長してくれたら結婚してもいいよ。間違っても師匠に侵食されて性格歪まないでね」
「同じ言葉を返しますよ」


結局僕たちは師匠の魔の手から逃げたいだけなのだろう。容赦ない制裁によってボロボロになった重い身体を引き摺って片付けをしている内に何だか凄く泣きたくなった。ああ幸せになりたい。





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某番組を見て成る程なーって思った話。






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