先日入江君がいなくなった。ボンゴレと組んでいたらしい。優秀な彼の抜けた穴は大きくミルフィオーレにしたらかなりの打撃だ。
けれどこの男は別段驚いた様子もなくいつも通りのんびり構えている。



「白蘭さんちゃんと仕事して下さいよ」
「やってるよ、だって正チャンいないから代わりにしてくれる人いないじゃん。あ、もしかして名前がする?」
「しません。自分の仕事で手一杯ですから」
「うそだって、好きな子にやらせるわけないじゃん」


白蘭はお得意の笑顔を貼り付けて床に散乱していた書類の一枚を拾い上げると漸く大人しくなって書類に目を通し始めた。



その横でちゃんと仕事をしているかを監視する。全く面倒な役だ。
今までは白蘭さんの世話係が、世話係がいなくなってからは入江君がしていた仕事がどうして私にまで回ってくるんだ。私だって自分の研究をしていたいのに。



「しかめっ面してるとせっかくの可愛い顔が台無しだよ」
「関係ありません」
「ねぇ正チャンいなくなって大変?」
「白蘭さんが働いてくれれば大変でもないですけど」
「はは、そうだね」
「白蘭さんは…」
「ん、何?」
「あ、やっぱりいいです」
「ふーん変なの」




それだけ言うと再び静かになった。



白蘭さんは入江君の事をどう思っているのか、と尋ねそうになって踏み止まってしまった。白蘭さんが何処まで本気だったのかは怪しいけれど少なくとも他の人より入江君を信頼していた様に見えたから。二人の間には何かしらの踏み込んではいけない領域が有るような気がして興味本位で聞くのが怖くなった。
何より白蘭さんの本心を知るのが怖かったのかもしれない。





「名前は気にしなくて良いんだよ」


声を掛けられ我に帰ると先程よりどこか淋しそうな笑みを浮かべた白蘭さんがいた。

この人は心の中が読めるのかもしれない。



「正チャンがいなくなったのは仕方ない事だよ」
「知ってたんですか?」



その問いに返事は無く代わりに笑みが深くなった。



「計画は順調に進んでる、多少の誤差は関係ないさ。それに名前は隣にいてくれるでしょ?」




紫の瞳に射ぬかれて、何も言い返せなくなった。差し出されたこの手を取るしか選択肢は無い。
彼の事が嫌だとか思わない。ただこの手を取ればもう後へは戻れない気がした。



「僕を信じてくれるよね?」








堕ちるなら何処までもお供しましょう。
私は白蘭さんの白い手を力一杯握り締めた。





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