「斎藤くんは私のこと本当に好き?」
「な、何を急に言うんだ」
「全然急じゃなことでもないわ。ただ好きかどうか聞いてるのよ」
「そ、れは…」
「ねぇってば」


私の彼は超が付くほどのお堅い生真面目風紀委員です。校則には厳しくて有名だけどそれは彼女にも容赦なくて、寧ろ特別厳しい気がしなくもない。

「スカートが短すぎる」
「化粧は校則違反だから落としてこい」
「最近やたら風紀違反が目立つが、気が緩んでるんじゃないか」

毎日顔を合わせれば小言ばっか、私は斎藤くんに少しでも可愛いと思ってほしくて努力しているのに、可愛いかどうか以前にまともに見てくれない。人の努力を気の緩みで片付けられたらいくら取り繕った笑顔を浮かべても心はボロボロ、顔が引き攣るのが分かる。

もしかした私の努力の結果が斎藤くんの好みにあってないのかもしれない、いやもしかしたらそもそも私に魅力がないから興味が持てないとか。下手すると実は好きじゃなかったり。
どんどん思考がネガティブになっていく。でも可能性が否定できないのが哀しいところ。だって付き合って半年以上経つのに手を繋いだのは数回だけ。キスやその先なんて夢のまた夢だ。

本当に愛されてるのかな…?

彼がどういう風に思ってるのかを確かめるためにも頑張ってみたのに、これじゃ全く意味がない。

「でもここで諦めたら私らしくないじゃない」

恋する乙女は強いのよ!!絶対に斎藤くんの本音を聞き出す、あと頑張った成果を認めさせて可愛いって言わせてやるんだから!!

思い立ったら即行動、それが私のモットーだから。早速斎藤くんの教室に向って無理矢理屋上へと引っ張っていくと真正面から向き合って単刀直入に聞いてみた。



「斎藤くんは私のこと本当に好き?」
「な、何を急に言うんだ」
「全然急じゃなことでもないわ。ただ好きかどうか聞いてるのよ」
「そ、れは…」
「ねぇってば」

一歩詰め寄って問いただせば自然と一歩下がる斎藤くん。それがますますグサッときて、逆に腹立たしくも感じる。

「私のことが嫌いならはっきりと嫌いって言ってよ。私は斎藤くんのこと大好なのに、こんなに好きって表現してるのに斎藤くんは好きって言ってくれない。キスだってしてくれない。斎藤くんの為に頑張ったのに気付いてくれない」

こうなったらこの際不満をぶつけてやろう、と思って口を開いたら心の中に溜まっていた言葉が次々出てくた。その勢いに最初は気圧されていた様子の斎藤くんの顔色が徐々に青くなったかと思うと今度は耳まで真っ赤になって狼狽えていたのがとても気になる。

「お前は俺が好いていないと思っているのか?」
「斎藤くんの態度から好きっていうのが殆ど感じられませんから」

私がきっぱり言えば斎藤くんは何か躊躇う様な素振りを見せ、おずおずと口を開いた。


「その…俺だってお前のことが好きだ。きっとお前が思っている以上に惚れてる」
「本当に?」
「ああ、だから最近やたらと…か、可愛らしくなって…他の男にお前が見られると思うと気が狂いそうだった」
「え、じゃあやたら小言が多かったのって」
「言わせるな!!」
「嫉妬してくれてたの?」
「っ…!!まぁ風紀違反には違いないが」

ちゃんと見ていてくれたの…?

予想外の言葉に胸がじんわりと熱くなる。必死に照れ隠ししようとする姿がとても愛おしく思えて先程までの怒りは何処へやら、私は思い切り斎藤くんに飛び付いた。いきなりのことで少しよろめいていたがしっかり抱きとめてくれる。

「不安に思わせたなら済まなかった」
「これからはちゃんと言葉と態度で示してよね」
「善処する」
「じゃあ早速キスして」
「な、何を言うんだ!!」
「何じゃない、だって半年も付き合ってどれ程私が待ったことか」
「う…」
「ほら好きならちゃんと示してよ」

抱きしめられたままだから彼の鼓動がとても早いのが直ぐに分かってしまう。ちょっと悪ノリしすぎたかな、と思ったけれどきっとけしかけとかないと斎藤くんは恥ずかしがってまたキスするまでに長い時間が掛かると思ったから。

ちょっとくらい強引なくらいが丁度いい。
恋する乙女は大胆ですから!!



狼さんわたしを食べて


「っ…!!」
「これからは一日一キスにしませんか」
(嬉しいが心臓が持たない)

110610~110621




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