「お前の髪は綺麗だな」

歳三さんの手がさらさらと私の髪を梳く、その感触がとても気持ち良くてつい身を委ねてしまう。すると頭上からくすくすと笑い声が聞こえてきた。

「なんだ、今日はやたら甘えるな」
「だってなんだか歳三さんがいつもより優しい気がして」
「それじゃいつもは優しくないってか?」
「昔に比べたら多少は丸くなったかも」
「おい」

怒った顔をしているけれど声色は随分と優しい。
今の歳三さんを見たらきっとみんなびっくりするんだろうな。

ほんの些細な変化だけど、新選組で剣を握っていた頃にはなかったものが平穏な毎日に溢れている。たくさん大事なものを失って一度は全てを無くしたと思ったけれど、引き換えに得たものは勝るとも劣らないかけがえのないものばかり。その中でも一番大切な存在はずっと隣にいてくれる。こんな幸せ勿体な過ぎる気もするけど更々手放す気だってない。今度こそ大事なものはしっかり掴んでおかないと、って思うから。


二人で縁側に腰掛けて他愛もない話をするだけの時間ですら愛おしく感じられる。

「私も昔の歳三さんくらいまで髪伸ばそうかな」
「そうだな、お前は長い方が絶対似合う」

珍しく真正面から褒められて思わず顔が赤くなる。その隙にそっと腰に腕が回って二人の間に距離が無くなった。

「もう刀を持つ必要もないんだから女としてこれまでの分も幸せに生きてくれ」
「それなら歳三さんだって幸せに生きて下さいよ、もっと肩の力抜いて。眉間に皺寄せたりせずにね」
「言われなくてもそのつもりだ」

耳元がくすぐったくて笑ってしまって少し呆れられたけれど、仕切り直して真剣な顔になると撫でていた髪を一束、そっと唇を近付けた。まるで誓いみたいでまた恥ずかしさが込み上げてくる。
だけどそれ以上に私、今とても満たされてる。


「今度こそは一緒に幸せにしてやるよ」


魅惑の髪に口づけを





でもやっぱり鬼の副長からそんな言葉が、ってもう眉間に皺寄ってるじゃないですか!!


110516~110610




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