「何を照れることがある」
「照れてるんじゃないです」

周囲の視線も気にせず強引に身体を引き寄せようとする目の前の男の胸を必死に押して抵抗すれば何を勘違いしたのか機嫌を良くして更に近寄ってくる。

「そんなに喜ばずとも俺は逃げたりしないから心配するな」
「何処かに行ってくれた方が嬉しいんですけど」
「ん、生徒会室に行くか?」
「いきません」

この傍迷惑な白ラン、風間千景にある日突然俺の嫁宣言をされてから所構わず付き纏われて、その度に何とか追い払うのだけれど、全く懲りる様子もなくてこちらのダメージばかり溜まってる気がしてならない。

そもそも彼がこの間まで同じクラスの千鶴ちゃんを追い掛け回してたのは有名だ。それに土方先生と同い年とか、ずっと嫁捜しの為に留年し続けるとか、怪しい噂が一杯あるし常識外れなことも平然とやってのけるちょっと人とは違った感覚の持ち主さんで、平穏無事な学校生活を送りたい私としては絶対に関わりたくない人なのにどうしてその人が私の目の前にいるんだろう。なんでこんなことになってるんだろう。

「先程から溜息ばかりだな」
「ちょ、近っ!!」

完全に自分の世界に入ってすっかり彼の存在を忘れている。声を掛けられて気が付けばいつの間にか風間の整った顔が物凄く近くにあって思わず仰け反ってしまった。

「よく見たら顔色も悪いな。保健室に行くか」
「あれ、ちょっと待ってください何勝手にしてるんですか」
「見てのままだ。保健室に連れて行ってやるところだが」
「別に保健室行かなくても大丈夫です。ていうかそうじゃなくて、お姫様抱っこ!?」
「それがどうした」
「いいですから下ろしてください」
「しかし気分が悪そうな名前を保健室まで歩かせるなど」
「だからそれは大丈夫ですってば」

妙なところで優しさを振り撒いてくるんだからたまったもんじゃない。そんな心配げに気遣ってくれたらちょっとキュンとしちゃうわよ、私だって乙女なんだから。

「今度は顔が赤いな」
「もう気にしないで、そして私を下ろして貴方はさっさと自分の教室に戻ってください」
「いくら愛しい名前の頼みでもそれは受け入れられんな」
「はぁ、ってちょっと本当に下ろして!!」

抱き上げられるだけでも恥ずかしいのに、あろうことかそのまま廊下へ出ようとしている。流石に不味いので精一杯暴れると、立ち止まって溜息一つ。別に何も変な事は言っていないのに呆れた表情をされる意味が分かりません。

「そんなに言うならば大人しく保健室に行くか、生徒会室で休んでるかどちらか選ばしてやる。俺としては生徒会室の方が都合が良いが」
「どっちも嫌です!!」

君は一度僕を好きになってみるべきだ

「ずっと抱き上げられていたいのか?まぁ偶にはそれも面白い」
「(もうやだこの羞恥プレイ)」



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2011年一発目もちー様ギャグ




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