「おはよう名前、今日もむっちゃ可愛いで」
「蔵は相変わらず頭が残念やわ」


朝っぱらからキラキラスマイルを浮かべているのは一応私の片割れである蔵ノ介、今日も絶好調で鬱陶しい。



「なぁ今日俺朝練ないから一緒に学校行かん?」
「行かんから。あ、ジャム取って」
「え、一緒に行こうや」
「無理蔵と一緒やと登校するだけで疲れるんやもん」
「何でやねん、お兄ちゃん泣いてまうわ。名前が一緒に行ってくれなジャム渡さんからな」
「お母さーん、新しいジャム無い?」
「俺のことは無視?無視するつもりですか名前ちゃん?」



俺の何が不満やねん!!と必死の形相でダイニングテーブルの向かいから身を乗り出して詰め寄ってくる。うん、前髪むっちゃはねてるよ。


「恥ずかしいやん、ええ歳して一緒に登校とか」
「問題ないやろ双子やねんし」
「嫌や」
「な、なんでやねん。そんなに俺より千歳の方がええんか?なぁ、ちゃうって言ってや!!」
「蔵には関係ありませんー」
「そう、か。そうか、名前もいつかは俺のとこから離れて行くって、心の中では分かってたつもりやけど…」
「あんたはお父さんですか」


さっきまでの勢いはどこへやら。乾いた笑みを浮かべ力なくふらつきながら部屋を飛び出しトイレに籠もった、ジャムの瓶を持ったまま。



「おい、ジャムは置いて行け」


もうそろそろ家を出ないと遅刻してまうのに。放置して行ってしまおかな、でも後でごちゃごちゃ言われても鬱陶しいし、一旦テンションが地に落ちた蔵を復活させるのにも骨が折れる。あーもう面倒くさいな!!


「くーら、はよ出てこんと遅刻すんで」
「ええねん、ほっといてくれ。名前は千歳と行ってくればええやん」
「ちぃちゃん関係ないやん。というか一昨日から放浪中やし」
「慰めなんかいらんで」


トイレのドア越しに聞こえてくる声が若干涙声なのはこの際気にしないことにしよう。だってここで笑ったらまたややこしいことになるのは分ってるから。


「関係ないとは言ったけど好きな人おるとは言ってへんやんか」
「でも、」
「それともなに?蔵は私のこと信用してくれんの?」
「そ、そんなわけないやろ!!」
「じゃあ出て来てよ、10秒以内に出んかったら一緒に行ったらへんからな」



言ったらすぐにばん、と勢いよくドアが開いて目が赤くなった蔵が出てきた。


「名前ー」
「はいはい泣かんの、ジャム置いて来て、前髪直して」



こんなみっともない姿とてもじゃないけど人に見せられんね。でも私にしてみればこっちの方が当たり前、と思うのもずっと一緒にいるせいかな。真っ赤な目で前髪に寝癖をつけたままジャムを片手に笑う蔵が一番素敵に思ってしまう。あ、こんなこと言ったらまた調子乗るから内緒やけど。


上げたり下げたり
白石家の朝(通常パターン)









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