File1-01
「あ〜寒い寒い。」
季節は秋。10月01日。
いよいよ、寒さが感じられる。
日本ならではの四季折々は美であると私は感じようと意識する。そのように、意識しなければ寒がりには辛くなってしまう。
「名前。」
声がするほうへ顔を向けると、
スーツをキチンと着こなした久しぶりに会う従兄の姿。
「はじめくん!!」
嬉しそうに駆け寄る。
そう、彼は斎藤一。
「名前、久しぶりだな。」
「そうだね!!仕事忙しい??」
彼は所謂刑事をしているので、事件によっては忙しくなる。
「昨日までは、少し立て込んでいてな。変わりないようで安心した。」
「そんな、2カ月ぐらいで変わらないよ。」
相変わらず過保護な彼。
私が中学生の時に両親を亡くしてからは、ずっと気に掛けてくれる。
「大学は順調か?」
「うん!」
「今日はおばあちゃん家寄っていくでしょう?」
「あぁ。」
「名前、随分と着込んでいるようだが…相変わらず寒がりだな。」
「寒いんだもの。」
たわいの無い話だけど、やっぱり嬉しい。
そう、思っている矢先、
パリンッッッーーーーー
ガラスの割れる音がする。
頭の中で
「早く渡してあげなきゃ。」
私と歳が変わらなそうな、女の子がハンカチを大切そうに机の引き出しにしまい込む。
「名前!!」
「あ…」
「大丈夫…か??」
「う…うん。」
これが、私の普通じゃない力。
亡くなった人の人間の強い念を感じ取れる力。
あぁ、そっか渡してあげるよ。
あなたの代わりに。
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