座っている沖田先生から
視線を音をした方向に向けると
そこには、顔を真っ赤にさせた
はじめ君。

「盗み聞きならもっとうまくやってよね?はじめ君。」

ニコニコ顏の沖田先生が
笑いを堪えながら
そんなことを言う。

「あぁ〜いいものが見れた。その御礼。」

沖田先生はポケットから
チャリンと金属音を鳴らし
彼の手に握らせる。

「はじめ君あとで英検の鍵返してね〜。」

手をヒラヒラさせ
戸を閉める音が
やけに響くような気がした。

数秒なのか、数分なのか
実際の時は分からないけれど
私には、この間が長く感じられて
いてもたってもいられず、

「あ、あの斎藤先生。私、そろそろ戻りますね。」

この空気に耐えられず
私から声を掛けた。

「名前。待ってくれ。少し、時間をくれないか。」

「え。」

「先ほど、総司と話していたことは本当か?」

「そ、それは…」

顔に熱が集まり、ぐるぐると考えが周り周りめぐる。

「本当か?」

「あぁ〜もう本当ですよ!悪いですか!っていうか聞かないでくださいよ!ばか!はじめ君のばか!斎藤先生のばか!!」

やけになって、わぁーっと言葉を出し切る。

「す、すまない。盗み聞きするつもりは無かったのだ。だが、嬉しかった。」

こんなに嬉しそうな顔をするなんて思わなくて、なんだかはじめ君がキラキラしてるように見えて。

はっと自分の気持ちに

「ですが、先生ですよ?斎藤先生。」

気付いてしまいそうで、

「それが、どうしたというのだ。俺は名前のことを好きなのだ。」

私の常識という文字が
無くなる瞬間だった。

私は彼に恋をしていたことに
気付いてしまった。

彼に二度恋をしてしまった。


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