日常茶飯事。
「はじめ、さん?」
繕い物を終えてから
斎藤さんの姿を探すと
洗濯をしている彼の姿を見つけた。
自分の下帯を手で叩き、しわを伸ばしてから干しているところをみると本当に几帳面なところは今も昔も変わらない。
「はじめさん、お洗濯していたんですね?」
「あぁ。」
「ふふふ。」
ついつい、そんな姿をみると
「何故、笑っているのだ。名前。」
「刀を持たなくなった時代になりましたけど、はじめさんは、はじめさんなんだなぁ。と、思いましてね?」
「自分の下着は自分で洗うのが武士のたしなみゆえ。」
少し顔を紅く染めて言う彼。
そんな彼をみると
「私は幸せものですね。」
「あぁ、俺もそう思う。名前。」
洗濯をした後の手は冷たくて
「ひゃっ」
手を握ろうとしてくれたのか
「っっすまない。」
「大丈夫です。」
彼の胸板に持たれ寄りかかる
「あったかいですから。」
そして、彼の手を自分の手で包み頬に寄せる。
「っ…今夜は覚悟しておくのだな。誘ったのは名前だからな。」
「………は?はい!?」
「名前、愛している」
「はじめさん。ずるい。」
あとがき
今から99年前の今日が、斎藤さんの命日だそうです。
そんな彼に敬意を。
実際に晩年の姿を語るひとコマとして、老いてからも自分の下帯、つまり褌を自分の手で洗濯し、しかも手で叩き、しわを伸ばしてから干すという習慣を続けていたらしいのです。
息子の嫁が
「そんなことは私がします」と言っても、「自分の下着は自分で洗うのが武士のたしなみだ」といって、やらせなかったという話があるらしいです。そんなところから、お話を作りました。
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