はるやくんご乱心っ!


 いつからだろう。彼に惹かれるようになったのは。
 常に一緒のパーティで、常に一緒のチームで、常に一緒にいて、常に一緒に戦って。最初、初めて会った頃は、友達になれたら嬉しいなんて思っていた。
 時を重ねていく内に仲良くなって、友達になって、仲間になって、親友になって。それでよかった。それでよかったのに。
 気が付いたら気になっていて、惹かれていて、好きという感情が芽生え始めていて。以前は女の子にかっこいいと言われたら嬉しかった。だけど今は何も感じない。彼の言葉しか感じない、嬉しくない。
 友達だと、仲間だと思っていた一緒のパーティの他のみんなが、ただの人としか思えなくなっていた。
 昔から盲目的だなんて言われていたけど。あれ? 俺って、ここまで来ていただろうか。
 人を好きになったことはいくらでもある。人と付き合ったこともいくらでもある。キスだって、セックスだって、今までに何回も重ねた。けれど、ここまで来たことはあっただろうか? ここまで盲目的になったことはあっただろうか?
 彼しか見えない。彼の蒼しか見えない。彼しか聞こえない。彼氏か感じられない。
 彼と手を繋ぎたい。彼を抱き締めたい。彼とキスしたい。彼とセックスしたい。彼の嬌声を聞きたい。彼の全てを感じたい。
 思えば思うほど、想えば想うほど、小さな欲望が見る見るうちに色欲に変わっていって、白かった感情があっという間に黒く濁っていって、汚くなっていく。止めることができないくらいのスピードで、堕ちていく。

 伝えたい伝えたい伝えたい。けれど伝えられない。壊れたくない。壊したくない。この関係を、彼を。
 今の状態のままでいいのかと問われたら、よくないと答えるだろう。満足なんて少しもしていない。けれど、言えないんだ。
 きっと衝動的になる。犯してしまうかもしれない。殺してしまうかもしれない。彼に嫌われたくない。
 伝えて、嫌われるくらいなら、初めから言わなければいい。鍵をかけて、鎖をつけて、心の奥に閉じこめておけばいい。
 そうしてまた、何も無い素振りを見せて、何も無いように話しかけて、何も無いように笑うんだ。いつも通りに。いつも通りに。少しでも異変や感情に気付かれないように。
「ハルヤ」
 そう思って、至って普通でいようとしているのに。彼に名前を呼ばれる度、狂ってしまいそうになるんだ。


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「見えない臓器の名前は」
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