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No.4『りん様→真広(甘め)』
静寂が時を刻む図書室。
そこに真広と一緒にいた。
「ねえ、真広。暇、なんだけど」
「うるさい。黙れ。口縫うぞ」
何という恐ろしい言葉のオンパレード。
見た目と相まって迫力は倍増だ。
これで親しい間柄だというのだから、周囲の人間は驚くだろう。
中学で同じクラスになって以来の付き合いだ。
ため息をこぼしてから口を閉じた。
そして、視線を落とす。
本棚から適当に抜き取ってきた本。
適当に選び過ぎて、趣味とはかすりもしない、難しい歴史の本だった。
真ん中らへんのページを開く。
途中からの文章に目を通す。
本当に面白くないと数行で諦めた。
口を閉じたまま、向かいに座る真広を盗み見る。
黙っていればカッコいい彼は、授業とは無関係な本を速い速度で捲っている。
何を調べているのか最初に聞いた時は「お前に関係ない」で終わらされた。
それなら、わざわざ誘ってくれなくてもいいのに、と捻くれてみるも、どういう意図が存在するにしろ一緒にいようとしてくれることが嬉しい。
我ながら単純だと思うが、それでもいいなんて思ってしまう。
多分、それだけ真広のことが好きなのだろう。
自分の心の中で一人会話を続けていれば、そんな結論に辿り着いた。
その瞬間、一気に恥ずかしくなる。
好きだと真広に直接伝えたのは一度だけ。
人生初めての告白をした時だけだ。
その時の衝動はまだ思い出せる。
生きてきた中で一番勇気を使った日だ。
簡単に忘れることなんてできない。
「おい」
しばらく自分の中で思い出と対話していた。
周りの情報をシャットダウンしていた。
真広に肩を叩かれるまで、自分が今どこにいるのかさえ、すっかり忘れていた。
「あ、ごめん……。ちょっと考え事してた」
「大丈夫か? 最近、ぼーっとしてること多いだろ?」
「そうかな? そんなことないと思うんだけど」
「自覚なしかよ。吉野から聞いてるんだからな」
「え、滝川くん、何言ってるんだろう」
「教えてやろうか。『真広、可愛い彼女が大切なら、もっと態度に出して大事にしないと、嫌われるよ』だったか?」
無駄な能力を発見してしまった。
今の真広による吉野の物真似はとても似ていた。
無意識にパチパチと小さな拍手を数回贈っていた。
「何だよ」
「え? あ、滝川くんの物真似、似ていたなあって」
あからさまに不機嫌顔。
今のどこがお気に召さなかったのだろう。
物真似が似ているといったところだろうか。
親友ならば、それくらい気にしないでもらいたいと彼女が心の中で訴えた瞬間、右腕を強く引かれた。
当然のように体は不自然な体勢に陥る。
「ちょ、真広――」
「吉野の名前ばっか呼ぶな、馬鹿」
「ヤキモチ?」
「んなモンあるか、ばーか」
思いの外優しい腕に彼女は嬉しそうに微笑んだ。
(2017/08/08)