君は嘘つき | ナノ


体育館倉庫の暗がりで泣く黄瀬はひどく美しく、鋭く俺を傷つけた。
否、これは正しいことなのだろう。
正しい断罪のようなものだったのだろう。

黄瀬を利用した自分への、正しい糾弾だったのだろう。


「…っあ゙ー」


気分が悪いので学校には向かわずに、なんとなく海へと向かった。広大な自然を見てちっぽけな自分を忘れようなんてことは思ってはいないが、気晴らしくらいにはなるだろうと思ってのことだ。

実際、海はきれいだった。
だが汚い自分と比較されるだけで、自分の罪を忘れることは許さなかった。

苦しそうに歪んだ黄瀬の顔。
忘れられるはずがなかった。


「…逃げようか」


黄瀬のいないところへ。
これ以上、あの優しすぎる彼を傷つけないように。


「どこへ逃げるの?」
「どっか遠くへ。…………へ?」


おかしい。今のは誰の声だ?

不審に思い振り返ると、明らかに不機嫌な真がそこに立っていた。まさか。でも、夢じゃない。
少し背が伸びていて、なんとなく寂しい気持ちに襲われる。俺がいない間に変わってしまった真。俺のせいなんだけど。


「…ふうん。でも、逃がさないから」
「へ?…お、怒ってるんじゃないのか…?」
「そりゃあ今でも腸が煮えくり返りそうなほどむかついてる、けど、名前がいないことが一番むかつく」


ムスッと眉根をよせて吐き出された言葉に一瞬ぽかーんと口を開けてしまった。
…俺がいないのがむかつく、って、そういう意味でいいの?


「真」
「なに」
「俺のこと、好き?」
「………」


やっぱり嫌われてしまったままなのだろうか。

心配になって真の傍へと近寄ると、腕を強く引かれ、バランスを崩してしまった。それを軽々と受け止めた真は前とは違ってかっこよく見えた。

真、まこと、まこと。


「俺のこと、まだ許せない?」
「当たり前だ、バァーカ」
「そっか」


許せないなら、許さなくていい。ただ、俺を受け入れてくれる真が嬉しくて、真の腕の中から顔を覗かせて軽く唇を合わせた。真の目が大きく見開かれたが、避けられることはない。
しばらくキスをして、ゆっくりと離す。真の視線が俺を這うように下がっていくのを感じていると、真は急に怪訝そうな声をあげた。


「…名前、このキスマーク、なに?」
「え」
「……また俺を裏切るんだ?」
「ちが…っ!」
「じゃあ、なに」


強い口調で詰め寄られ、言葉を失う。もう隠すことは出来なかった。


「…最近毎日セックスしてるやつ」
「好きなの?」
「わかんねー。あいつに名前を呼ばれると、死にたくなる」
「……ね、俺の学校来なよ」


何か企んだような顔で勧誘してくる真はそれはそれで可愛かったのだが、どこか漂う異質さがそれを打ち消していた。


「大丈夫、俺が全部手続きしておくから。部屋も、名前の場所はちゃんと取っておいてある。何も問題ねーから」
「真、なんか変じゃねえ…?」
「なにが?」


ぐるりと振り返る真の目はひどく虚ろだった。





▽▼▽





「ん゙っ…ふ…っ、はぁ…ん」


ぐちゅぐちゅと後孔を弄られるのは初めてで、真の乱暴な手つきが最初こそ痛く感じたものの、しばらくするうちに快感へと変わっていた。
「舐めろよ」愉しげに言う真に従って、真のソレを丹念に舐めあげる。溢れてくる苦い汁を全部舐めとれば、真は嬉しそうに俺の頭を撫でた。


「初めてにしては上出来だ」


初めてじゃない、なんて言える雰囲気ではなかった。
そういえば俺が初めてだったと言えば、黄瀬が喜んでいたなあ。それは、そういうことだったのか。


「考え事か?」


頭を掴まれて勢いよく引かれた。喉の奥までちんこが入り、苦しくなって噎せる。すると真はますます表情を歪ませて、今度は俺を後ろ向きにさせると、そそりたつソレを押し付けた。
ぞくり、と全身が粟立つ。

あれ、真ってこんなやつだったっけ?

俺の好きだった真がもうどこにもいないことを悟った俺は、泣きそうになりながらも必死に"花宮真"の欲を受け入れた。



20120820
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