「名前っち!体育一緒に行きましょ!」
「おう、これ仕舞ったら行く」
次の時間は体育だ。しかも、バスケ。名前っちがいつもよりテンションが低いように見えるから、俺のバスケを見て少しでも元気になってほしい。
「俺のプレーちゃんと見ててくださいね!」
「俺見学だからずっと見ててやるよ」
「エッ!見学なんスか?勿体無い」
「バスケ苦手なんだよ」
意外だ。名前は運動神経がよく、サッカーのときにはサッカー部の人よりも活躍していたのに。
サッカーだけではない。バレーのときもバドミントンのときもハンドボールのときも大活躍していたのに、なんでバスケだけ?
「名前っち、バスケ、楽しいッスよ?」
「知ってる」
「なら、なんで」
「昔バスケして嫌われたことあるから」
「えっ…?」
「150-23。…バスケ部のレギュラーだったやつに勝ったんだ。強いやつだったのに」
「……ッ!」
悲しそうに話す名前っちに怒りが込み上げる。なんだよそれ。
才能持っておきながら泣きそうになるのって、腹立つ。
腐ってんじゃねーよ。
「名前っち、バスケやりましょ」
「嫌だ」
「俺、負けても嫌いにならないッス。まあ、リベンジに付き合ってはもらいますけど………駄目ッスか?」
惚れた弱味というやつか、名前相手にだと少し弱腰になってしまった。しかし、名前は俺の目をじっと見つめたあと、「いいよ」と気だるそうに了承してくれた。
▽▼▽
「…これ、青峰っちとタメ張れるッスよ」
52-80で、俺たちが負けている。
なんだこれ。
帝光時代の青峰っちを彷彿とさせるプレーに、闘争心が燃え上がった。
楽しい。
勝ちたい。
「172-93で、名字チームの勝ち!」
クラスが沸き上がる中、名前っちは窺うように俺を見た。いつもの名前っちからは考えられないような、どこか不安がるような目。それがどうしようもなく愛しくて、へにゃりと笑った。
「名前っち、いつかリベンジするッスよ!」
「………」
名前は少し考える素振りを見せると、俺を連れて体育館倉庫へ入り、鍵をかけた。ちょっぴり期待してしまう自分が憎い。でも、それくらい名前のことが好きだった。どうしようもなく惚れていたのだ。
「まこ、と…」
たとえ彼が俺を見ていなかったとしても、今さら嫌いになるなんてできるはずが、ない。
20120819
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