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▼ 横たえた未来が責める

仕事のせいで遅刻をしていた俺は、諦めを含んだほの暗い瞳をしたかわいらしい少女と目があった。
スーパーからの帰り道なのか、手にはビニール袋。目に痛いほどの真っ赤なTシャツとそこからすらりと伸びた腕がひどくなまめかしくて、その感情を隠すため、へらりと笑いかけた。

学校に行ったことがないと少女は悲しそうに行ったから、俺は思わず口を開いていた。

まさか本気にしてくれたとは思わなくて、次の日学校へ来てくれたのを見てとても嬉しくなった。





横たえた未来が責める





「名前っち、教科書見せてあげるっス!」
「ありがとう」
「わからないところがあったらどんどん聞いてくださいっス!」


意気揚々と言うと、先生から嫌な視線が飛んできた。
うげ、マジで?


「お前はいつからそんなに頭よくなったんだ?おい黄瀬、ならここ解いてみろ」
「応用問題なんてひどいっス!」
「黄瀬くん、これ」


先生に応用問題を当てられて困っていたら、名前っちがノートをこちらへ渡してきた。なにかな、と思って見てみれば、今俺が当てられている問題の答え。


「―――…っス」


式をずらーっと読んでいったら、先生が嬉しそうに「なんだ、やれば出来るじゃないか!」と言った。俺はそれよりも、ずっと学校に来てなかった名前っちが実は頭が良かったことに驚いた。知的な雰囲気だから、頭が悪くはなさそうだと思ってはいたが、ここまでとは。


「ありがとうっス」


小声でお礼を言ったら照れ臭そうにはにかまれた。


「いつも征十郎に教えてもらってるから」
「…それは良かったっスね」


なんだか複雑な気分だ。
赤司っちのことはキャプテンとしてとても尊敬しているが、名前と関わっているとなると面白くない。

名前っちは恐らく赤司っちしか知らない。たぶん。赤司っちは名前っちのことを溺愛している。これも、たぶん。だって、女嫌いで有名な赤司っちが女の子に勉強を教えてるってだけでもありえない。それなのに、お揃いの携帯。しかも、昨日さりげなく確認してみたところ、名前の携帯には赤司っちの番号しか入っていなかった。


「黄瀬くんはわたしのこと嫌い?」
「エ!いきなりどうしたんスか?!」
「つまらなさそうだったから。わたしのこと嫌いだったらもう関わらないよ」
「そんなことないっスよ!むしろ大好きっ……ス……」


いきなりの質問で慌てていた俺も俺だけど、休み時間になると同時に駆け込む赤司っちも赤司っちだ。眉間に皺が寄っている。

うわあ、今の聞かれたな。



20120812

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