▼ 饐えた花を齧る
いないいない、僕。
饐えた花を齧る
学校から帰ると扉が壊されていた。
慌てて中を確かめたが、そこはもぬけの殻。
名前が行きそうな場所といえば黄瀬の家しか思い付かなかったので電話をかけると、黄瀬はなにも知らなかったようで、名前の失踪に驚いていた。
「ホントに、家にはいないんスか?」
「ああ」
「…あっ!」
「どうした!?」
「郵便受けに、名前っちにあげた合鍵が入ってたっス…。名前っちはいませんが…」
合鍵のことを問い詰めたかったが、今はそんなことに時間をさいている暇はない。
黄瀬の家に一回寄ったということは、つまり、どういうことだ。
ドアを壊してまでやりたかったことが、黄瀬に合鍵を返すことのはずがない。
パニックになった頭で考えていると、名前の机の上に手紙のようなものが置かれていることに気がついた。
近づいて見てみると、封筒には"遺書"と書かれていた。
そのとき俺は蒼白な顔をしていたと思う。
震える手で、それを、開いた。
20120902
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