エラー・エラー | ナノ


▼ 愛撫するような破壊衝動

「赤司くんの調子が悪い原因、黄瀬くんはわかってるのでは?」
「な、んの…ことっスか?」
「惚けるのが下手ですね」
「そんなことないっスよ」
「黄瀬くん、何を隠しているんですか」
「何も隠してなんかいないっスよ」


黒子っちの瞳は、俺とは違ってどこまでも透き通っていた。


俺は気づいていた。
こんなことすぐバレてしまうに違いない、と。





愛撫するような破壊衝動





「こうしてレギュラー全員でお昼をとるのは久しぶりだな」
「そうだな。たまにはアリかもな」
「桃井さんのアイディアでしたっけ」
「そうよ。最近みんなちょっとおかしかったから、リフレッシュの意味も込めて」


わいわいがやがやと屋上へ進む俺たちは格好の視線の的だ。揃っていなくとも、キセキの世代メンバーは人目をひくのだから。

みんなが屋上へ到達すると、適当な場所を見繕って、円になって座り込む。

そこで、気づいた。
――俺の弁当を作ってくれた人物は誰だった?と。


「黄瀬くんにはお世話になったから、これくらいはさせて」


――迂闊だった。

弁当を赤司っちに見せるわけにはいかない、と、俺は適当に理由をつけて退散しようとしたのだが、「僕に逆らう奴は?」と赤司っちに笑顔で言われたことにより、退散するに出来ない状況が作られてしまった。


「いい子だ、黄瀬」


嬉しくない。

が、これはもう覚悟を決めるしかない。
決心して弁当箱のフタを開けると、赤司っちは目を見開いて俺を見た。


「その弁当……黄瀬、まさか」


その震えるような声に異変を感じとったのか、メンバーの空気が凍った。まるで処刑場だ。どうやら最悪の事態になってしまったらしい。こうなったら自棄だ。


「名前っちください」


次の瞬間俺の視界が反転した。気づいたら空を映していて、ああ、殴られたんだなあと無機質に感じる。
起き上がると赤司っちが右手をおさえていた。


「名前っち、死にたがってたんス。真っ暗な中、ただ死んだような目をして死にたいって呟いたんス」
「…僕が間違っているとでも?」
「赤司っちは本当にそれを望んでたんスか?」
「………」
「俺が名前っちに告白したら、愛してるって言えば簡単に落ちると思った?って聞かれました。当たりだよって泣きそうな顔をして言われました。そんな名前っちを放っておけるはずがないっス」
「放っておいていいんだよ、黄瀬。名前は僕のなんだから」
「赤司っちは間違ってるっス」


ハッキリと断言すると俺は一口も食べていない弁当を仕舞って屋上を後にした。



20120825

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