◎俺の雪の女王
act.1
生まれたときから自我を持っていた。俺がどういう存在か、どういう力を持っているか、はたまたその力の使い方まで鮮明に思い出すことが出来ていた。俺は特質系の念能力者だ。
生まれた瞬間俺はまず目を疑い、頭を疑い、そして最終的にそれを受け入れた。泣かずに生まれてきた俺を心配した両親だが、異常はないと分かるとほっとしたように顔を弛ませていた。
そして、一年後、俺に妹が出来た。名をエルサと言った。
そのとき、俺はふと思った。――エルザも俺と同じようになればいい、と。俺のような力を持ち、俺のように生きればいいと。
俺の念能力は《否応無しの押し売り人》(セールスマン)と言い、自分の持っている力や他人の持っている力を人に与えることが出来る。本人の意見も関係なしに。
にい、と笑ってエルサの額に手を翳した。
力を与えられた人間はその力を手放すことは出来ない。望んで手放そうとした人間はいないが、かつて一人だけ、この力を放棄出来た者がいた。名を、ジョナサン=ジョースターと言う。彼はエリナという女性に介抱されたときにこの力を放棄した。このことから思うに、この力を手放すには“真実の愛”というものが必要なのだろう。
とは言え、俺は今は違う世界にいる。この力がどのように変化しているかは詳しくは知らないのだ。
すやすやと眠るエルサの頬に、俺はそっとキスを落とした。
act.2
俺は王位継承権を剥奪された。理由は、故国王、及び故女王の死に俺が関わっていると思われたからである。いつも部屋に閉じこもりっきりで、部屋から出そうと呼びかける彼らを憎んでいると思われたらしい、というのは建前で、本当は同盟国の奴らが狡賢い俺をやりづらいと思ったから退けたのだろう。
パーティーを一切行わないどころか城の門を閉めっぱなしの現状に俺が喜んでいないとでも思っているのか。これならば、貿易も多少やりづらいが俺が王位を継承していた方がよかったと思っているんじゃないだろうな。
しかし、俺はこれでよかった。
エルサは妹のアナに昔攻撃をしてしまったことがある。そのせいで他人と距離を置くようになってしまった。――俺以外との。
エルサは俺を通してしか会話をしない。俺がエルザに傷つけられないことを教えたから俺だけがエルサに近づける。
「エルサ、俺のかわいいエルサ」
「‥お兄様」
「大丈夫。お前は何も悪くないよ」
「‥こわいの、誰かを傷つけることが」
「俺が全部、こわいことを無かったことにしてあげるから、安心して」
安心して、俺に依存するといい。
2013XXXX
未完です
mae tsugi
戻る