◎天使がやってきた
「――腕は立つからよろしくな」
松平公に連れられてきた新入りは、まるで人形のように精巧で、その人形らしさに違和感を与えないくらいに無表情だった。
‥って、いやいやいやいや。
「おいおい、とっつぁん。腕が立つって言ったって、こっちも色々あんだよ」
「むさ苦しいお前等のイメージアップでもあるんだぞ、これは。考えても見ろ。ゴリラ、マヨ、サディスト。マトモな奴がいねーじゃねーか」
「それを言うならこいつだってマトモかわかんねーぞ」
真選組に入隊するのはその実簡単なことではない。隊士としてやっていけると判断出来た者のみが初めて黒い隊服を着ることを許される。
それなのに、イメージアップのためだけに入れられるわけがなかった。ちなみにお通ちゃんは別だ。
抗議の声をあげると松平公はだるそうに言う。
「名前くんが入ったらイメージアップ間違いなしだぞ。それに、ここまでイメージを悪くしたのは誰だ?嫌だとは言わせねーよ」
「クッ‥」
「そういうわけで、頼んだぞ」
上司の命令に逆らえないのが部下のつらいところだ。
諦めて名前くんと呼ばれた人物に向かい合うと、「僕は名前。慣れないことが多くてご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」と深々と頭を下げられた。
「‥ッ! 俺は土方十四郎だ。よろしく頼む」
あまりの常識人っぷりに涙が出るかと思った。
言わずもがな総悟の無礼の連続に「年上とはなんぞや」という境地に達していた俺のオアシスがやっと見つかったようだ。
「教えていただければ何でもやるのでご指導よろしくお願いします」
「ああ、頼もしいな」
天使か。
20140322
mae tsugi
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